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重希土類元素ジスプロシウムを使わない高保磁力ネオジム磁石


独立行政法人物質・材料研究機構

概要

  1. 独立行政法人物質・材料研究機構(理事長:潮田資勝)磁性材料センター(センター長:宝野和博)はハイブリッド車の駆動モータに使われるネオジム磁石の高保磁力化に必須の重希土類元素(重レアアース)であるジスプロシウム(Dysprosium、以下Dy)を用いずに、原料粉の保磁力を高める方法を開発した。本研究では、水素化・不均化・脱水素・再結合(HDDR)法で製造されるネオジム磁石粉にネオジム銅合金を拡散させ、粉のなかにある無数の微細結晶の界面組成を制御することによって、ジスプロシウムなどの資源的に希少な重レアアースを使わなくても、保磁力を高めることができることを実証した。
  2. 通常のネオジム磁石(ネオジム・鉄・硼素の3元素からなる)は温度上昇に伴い、「保磁力」とよばれる磁石特性が低下する。そのため、駆動モータの動作により、磁石の温度が200℃ 程度になるハイブリッド車の駆動部には、そのままでは使えない。そのため、ハイブリッド車の駆動モータでは、ネオジムの 40%を重レアアースであるジスプロシウムで置き換えたジスプロシウム含有ネオジム磁石が使われている。
  3. ジスプロシウムは地球上の存在比がネオジムの10%程度であり、しかも90%以上が中国で産出されている。そのため、大量供給の必要のある磁石はジスプロシウム量を少なくともレアアースの10%以下に削減することが求められている。
  4. 従来のジスプロシウム量を削減する有効な方法としては、磁石の表面からジスプロシウムを結晶と結晶の界面(結晶粒界)に沿って拡散させる方法がある。結晶粒界部分のネオジムだけをジスプロシウムで置換することにより、必要なジスプロシウム量を大幅に減らすことができる。この拡散法では結晶粒界部分にジスプロシウムなどの重レアアースを使う必要があると考えられていた。
  5. 本研究では、結晶粒間の磁気的な結合を切ることにより、保磁力を強化できるという発想から、融点の低いネオジム銅合金を結晶粒界に沿って拡散させ、結晶粒界のネオジム組成を改善する方法を提案した。それにより、ジスプロシウムを全く使わずに保磁力を高めることが可能であることを見出した。本研究は焼結磁石よりも約一桁微細な結晶粒径を持つ HDDR 法による磁粉に適用され、微細結晶粒の磁気的孤立化による高保磁力の発現を実証したものである。
  6. 本研究結果は9月6日につくば市で開催される日本磁気学会学術講演会にて発表される。また材料系速報誌であるScripta Materialia に受理されている。なお、本研究は文部科学省元素戦略プロジェクト「低希土類元素組成高性能異方性ナノコンポジット磁石の開発」の一環として行われた。

プレス資料中の図1プレス資料中の図1 250 nmのナノ結晶から構成されるNd-Fe-B系HDDR磁粉の走査電子顕微鏡像。(a)は拡散処理前の保磁力16 kOeの磁石、(b)はNd-Cu合金の拡散処理後の保磁力19.6 kOeの磁石の組織。(b)では暗く観察されている磁石の結晶が明るく観察されるNdの濃化した相により分断されている。

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