鉄系超伝導線材の簡便な作製方法を開発

2009.06.09


独立行政法人物質・材料研究機構
独立行政法人科学技術振興機構

NIMSとJSTは、鉄系超伝導を用いた超伝導線材の簡便な作製方法の開発に成功した。この成果は、NIMS超伝導材料センター ナノフロンティア材料グループの研究によって得られた。

概要

  1. 独立行政法人 物質・材料研究機構 (理事長 : 岸 輝雄、以下NIMS) と独立行政法人 科学技術振興機構 (理事長 : 北澤 宏一、以下JST) は、鉄系超伝導を用いた超伝導線材の簡便な作製方法の開発に成功した。この成果は、NIMS超伝導材料センター (センター長 : 熊倉 浩明) ナノフロンティア材料グループの高野 義彦 グループリーダーらの研究によって得られた。
  2. 2. 2008年初頭、東京工業大学の細野教授のグループによって、鉄系超伝導体LaFeAsO系が発見された。この発見を契機に、類似化合物であるSrFe2As2系やLiFeAs系、Fe(Se,Te)系など、新しい超伝導体が次々発見され鉄系超伝導ブームが巻き起こった。この鉄系超伝導体を応用していくために、超伝導線材の試作が求められている。超伝導線材に流れる超伝導電流は、ロス無く電気を運ぶことができるため、環境エネルギー問題解決の切り札として期待されている。最近、中国のグループにより、LaFeAsO系とSrFe2As2系超伝導体を用いた線材の試作が行われたが、どちらも通電試験において超伝導電流が流れていない。
  3. 3. 我々のグループが本研究に用いた鉄系超伝導体は、最も単純な結晶構造を持つFe(Se,Te)である。鉄系超伝導体の主成分である鉄は豊富に存在し、現在、広く使われている材料である。その特徴を生かして、超伝導線材のシース材に鉄を用い、同時にシース材が超伝導物質の材料を兼ねるという簡便な超伝導線材の作製方法を開発した。FeSe系を用いた線材の試作は世界で初めてであり、鉄系超伝導体を用いた線材で超伝導臨界電流を流すことに成功したのも今回が世界で初めての例である。
  4. 4. 本発見のプロセスは、多芯化や長尺化が容易で、それを用いた超伝導マグネットなどへの応用が考えられる。圧延しながら熱処理するホットプレスなどを用いることで、性能の向上が期待される。また、製造プロセスが容易であるため、今後より多くの研究者が研究開発に参画することなどが見込まれ、応用研究に弾みがつくものと期待される。
  5. 5. 本研究成果は、JST戦略的創造研究推進事業 研究領域「新規材料による高温超伝導基盤技術」 (研究総括 : 福山 秀敏・東京理科大学 理学部 教授) の研究課題「鉄セレン系超伝導体の機構解明と新物質探索」 (研究代表者 : 高野 義彦) の一環として得られた。

「プレス資料中の図1: 線材化プロセスの略図」の画像

プレス資料中の図1: 線材化プロセスの略図



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