超高分子量ポリエチレンのコーティング法を開発

産業用構造材料の耐環境性能向上や表面機能化に大きな可能性

2008.03.13


独立行政法人物質・材料研究機構

NIMSコーティング・複合材料センターは、超高分子量ポリエチレンの粉体を適度に加熱・加速して、大気中でも材料劣化させずに高速にコーティングするスプレー方法を開発した。

概要

  1. 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 岸 輝雄) コーティング・複合材料センターの川喜多 仁 主任研究員らは、超高分子量ポリエチレンの粉体を適度に加熱・加速して大気中でも材料劣化させずに高速にコーティングするスプレー方法を開発した。
  2. 超高分子量ポリエチレンは流動性に乏しいため、粉体を溶融・流動させるコーティング法を用いることができない。また、有機溶剤に分散させる塗装技術では、環境負荷が大きく、さらに従来の溶射技術では成膜時の材料の熱的劣化が免れない。
  3. そこで、大気中での溶射プロセスにおいて、プラスチック材料の熱物性に合わせた加熱方法を見直すことから出発し、金属や無機酸化物に比べて熱伝導率および分解温度が低いプラスチック材料を用いるために、当グループで確立した材料の熱的劣化を抑制したままコーティングを可能にするスプレー方法 (ウォームスプレー) を活用し、従来よりも低い温度で長時間にわたって加熱・加速することが可能なスプレーガン構造としたことにより、今回の技術が達成された。
  4. 得られた超高分子量ポリエチレンのコーティングは作製プロセス中の熱的劣化が抑制されており、厚さ50ミクロンにおいて水の浸透を遮断できることが確認されていることから、印刷機などに用いられる各種ロール上への樹脂カバー、化学プラントおよび海洋構造物に用いられる金属材料の耐環境コーティングなどへの適用が可能と考えられる。また、今回開発したスプレー方法は広範な熱可塑性プラスチック材料に適用できる可能性が高く、PEEKなどの高機能性を有するエンジニアリングプラスチックの薄膜形成が期待される。
  5. 本研究成果は2008年6月にオランダで開催の国際溶射会議で発表を予定している。

「プレス資料中の図4: 炭素鋼基材上の超高分子量ポリエチレンコーティングの断面写真」の画像

プレス資料中の図4: 炭素鋼基材上の超高分子量ポリエチレンコーティングの断面写真



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研究内容に関すること

独立行政法人物質・材料研究機構
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川喜多 仁 (かわきた じん)
TEL: 029-859-2445
FAX: 029-859-2401
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