単層でマルチカラーを表示できるエレクトロクロミック材料

電子ペーパーのフルカラー化へのブレークスルー

2007.03.22


独立行政法人物質・材料研究機構

NIMSナノ有機センターの樋口 昌芳 主幹研究員らは、金属イオンと有機分子が数珠つなぎになった新型高分子の合成に成功し、この高分子がマルチカラーを表示可能な優れたエレクトロクロミック材料となることを発見した。

概要

  1. 独立行政法人物質・材料研究機構 ナノ有機センター 機能モジュールグループの樋口 昌芳 主幹研究員らは、金属イオンと有機分子の間に働く引力 (配位結合) を利用して、金属イオンと有機分子が数珠 (じゅず) つなぎになった新型高分子の合成に成功し、この高分子がマルチカラーを表示可能な優れたエレクトロクロミック材料となることを発見した。
  2. これまでの有機エレクトロクロミック材料 (導電性高分子など) は、酸化還元に伴う物質の構造変化によって発色を制御しているために、長期使用による構造的な劣化が避けられない。また、それら有機材料の発色はその有機物固有のものであるため、色の調整や制御はほとんど不可能である。さらに、一般にエレクトロクロミック材料は青から赤といった2種類の色を電気化学的に表示できるが、3種類以上の色を表示することは極めて困難であった。
  3. 今回開発した物質は、金属イオンと有機分子の間に働く引力 (配位結合) を利用して、金属イオンと有機分子が数珠 (じゅず) つなぎになった新しいタイプの高分子であり、高分子内部の金属イオンを酸化還元することで、優れたエレクトロクロミック特性を示す。発色は「金属から有機部位への電荷移動吸収」によって起こるため、金属イオンと有機分子が配位結合して (高分子化して) 初めて発色するという特殊なものである。
  4. 金属イオンと有機分子が数珠 (じゅず) つなぎになったこの新しいタイプの高分子は、溶液中で容易に合成でき、従来の有機高分子同様に基板の上に成膜させることができる。有機高分子の特徴と金属の特徴を併せ持つため、その優れた発色性や電気応答特性を生かして、電子ペーパー等の次世代表示材料として利用が期待される。特に今回、2種類の金属イオン種を高分子鎖に導入することで、赤→青→無色透明の3種類の色を表示すること (マルチカラー化) に成功した。また、有機部位を修飾することで「金属から有機部位への電荷移動吸収」のエネルギーギャップをコントロールし、緑色を表示させることにも成功した。
  5. なお、今回の成果は、3月25 - 28日に開催される日本化学会年会で発表予定である。

「プレス資料中の図1: 金属イオンと有機分子が数珠 (じゅず) つなぎになった新高分子」の画像

プレス資料中の図1: 金属イオンと有機分子が数珠 (じゅず) つなぎになった新高分子



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