世界で初めてカーボンナノチューブ表面にアミロイド構造体を形成・確認

狂牛病、アルツハイマー病などのタンパク質変性現象解明と無機 - 生体物質複合ナノデバイスの創製

2006.09.14


独立行政法人物質・材料研究機構

NIMS新構造材料センターは、ステンレス鋼中に数μm程度のh-BN (六方晶系窒化ホウ素) 粒子を均一に分散析出させることにより、切削性を20%以上も向上したステンレス鋼の製造に成功した。

概要

  1. 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 岸 輝雄) センサ材料センター (センター長 : 羽田 肇) センサ化学グループリーダー 羽田 肇 (兼) らは、国立大学法人静岡大学教授 藤本 正之 らの研究グループとともに、世界で初めてアルツハイマー病などの原因物質として知られる生体物質のアミロイドが、カーボンナノチューブ表面でも形成する現象を確認した。
  2. アミロイドは、狂牛病 (BSE) 4)、クロイツフェルト・ヤコブ病、アルツハイマー病などの原因物質として知られている。アミロイド物質は非常に安定な物質であり、一度体内で生成されると体の代謝機能による排出ができないために次々と体内に蓄積されることが原因で発症する。現在、これら疾病の治療・予防方法を見出すためにアミロイド生成機構の解明が急がれているところである。しかし、機構解明には複雑な点が多く、現状ではまだまだアミロイド生成機構は明らかになっていない。一方、材料学的視点からはアミロイドの構造安定性は長所である。アミロイド物質を用いた、新規なバイオナノ材料への応用が期待できる。
  3. 今回、カーボンナノチューブ表面で、狂牛病 (BSE) 、クロイツフェルト・ヤコブ病、アルツハイマー病などの原因物質と同じアミロイド物質が自己触媒的に形成される現象を見出した。アミロイド物質の材料として、たんぱく質を構成するアミノ酸分子が1本に連なった紐が螺旋状に巻いた構造のα (アルファ) ヘリックスを用いた。水面上にαヘリックスを一様に展開してカーボンナノチューブ (CNT) 表面に接するだけで、CNT表面を完全に被覆するようにアミロイド物質が自己触媒的に形成される現象が見出された。カーボンナノチューブ表面でのアミロイド物質の形成現象は初めてである。従来は、溶液中でアミロイド物質を成長させるという複雑な実験系を用いて形成機構の解明を行っている。今回見出された方法は、従来の溶液中とは異なりCNT表面という既知の固体表面での単純な形成方法である。本手法を利用すればアミロイド形成機構の解明促進に役立つと見ている。また、バイオナノ材料としてのアミロイド物質の生成が容易になる。
  4. 物質・材料研究機構と静岡大学とは、静岡大学大学院電子科学研究科の21世紀COEプログラムを橋渡しとしてビジョン工学・センシング工学7)研究の進展と若手研究者の育成を目的とした研究交流促進のための協定を締結している。今回のカーボンナノチューブ表面でのアミロイド構造体自己組織形成研究は、本協定の成果であり、9月に発刊される国際学術誌Journal of Electron Microscopy 55巻3号に掲載される。

「プレス資料中の図2: 左図はカーボンナノチューブ表面に形成されたアミロイド構造体の原子間力顕微鏡像。カーボンナノチューブ表面を覆うアミロイド物質が帯びにからみついているのが分かる。右図はカーボンナノチューブだけのもの。」の画像

プレス資料中の図2: 左図はカーボンナノチューブ表面に形成されたアミロイド構造体の原子間力顕微鏡像。カーボンナノチューブ表面を覆うアミロイド物質が帯びにからみついているのが分かる。右図はカーボンナノチューブだけのもの。



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独立行政法人物質・材料研究機構
センサ材料センター
羽田 肇 (はねだ はじめ)
TEL: 029-860-4665 (ダイヤルイン)
FAX: 029-855-1196
E-Mail: HANEDA.Hajime=nims.go.jp
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藤本 正之 (ふじもと まさゆき)
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