室温で液状のフラーレン

溶剤を用いない液状ナノカーボン (フラーレン) のマテリアル化に指針

2006.07.25


独立行政法人物質・材料研究機構

NIMSナノ有機センター 超分子グループの中西 尚志研究員らは、炭素系ナノ材料であるフラーレンに化学修飾を施すことによって、室温において溶媒を含まな液状のカーボン素材の開発に成功した。

概要

  1. 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 岸 輝雄) ナノ有機センター (センター長 : 一ノ瀬 泉) 超分子グループの中西 尚志 研究員 (若手国際研究拠点兼任) は、同グループの道信 剛志 特別研究員、有賀 克彦 ディレクターらと共に、炭素系ナノ材料であるフラーレンに化学修飾を施すことによって、室温において溶媒を含まない液状のカーボン素材の開発に成功した。
  2. フラーレンは、カーボンナノチューブなどと同様に、ナノカーボンとして、電子材料、生体材料への様々な応用が期待されている。これらナノカーボンは、通常、粉体及び固体として取り扱われるが、強く自己集合してしまうためナノカーボン単独の特性を示さない。ナノカーボンが均一溶解する溶媒も存在するが、一般に高濃度溶液を作ることは困難である。完全に均一分散した高密度ナノカーボンを得るにはナノカーボン自身を液体にするほかない。過去には、フラーレンに複数の置換基を化学修飾すると、偶然、流動状態が得られるケースも報告されているが、過剰の化学修飾はフラーレンの構造を破壊する両刃の剣であるため、フラーレン自身の特徴的な機能が失われるなどの問題があった。
  3. 今回、フラーレンを一つの置換基で化学修飾することにより、溶媒に溶かさなくても、室温において液状のフラーレン化合物を得ることが可能となった。ポイントは、置換基としてあらかじめアルキル鎖がバラバラに広がるように分子設計された構造を選択し、フラーレン部の凝集をうまく抑制した点にある。液状フラーレンの流動挙動およびその機能に関して系統的に検討した結果、導入するアルキル鎖の長さを変化させることにより、液体の粘性を制御できることが見出された。また、この液状フラーレンは、フラーレン固有の特性を保持しており、電気化学的に活性であった。さらに液状の利点として比較的高いホール移動度も合せ持つことも明らかになった。
  4. 本発明の液状フラーレンは、電気化学活性であることを利用した二次電池の炭素電極や、高いホール輸送性を活かした電気化学キャパシタなどに用いることが可能である。また、導電性と高い粘着性を兼ね備えた導電性付与材など、これまでのフラーレンの用途にない新たなマテリアルとしての可能性も十分に秘めている。この成果は、国際学術誌「Journal of the American Chemical Society」に近日掲載される予定である。

「プレス資料中の図: 本研究で用いた液状を示すフラーレン化合物 (左上) .それぞれの化合物の写真および光学顕微鏡画像.粘性値を下に示している」の画像

プレス資料中の図: 本研究で用いた液状を示すフラーレン化合物 (左上) .それぞれの化合物の写真および光学顕微鏡画像.粘性値を下に示している



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独立行政法人物質・材料研究機構
ナノ有機センター 超分子グループ
中西 尚志 (なかにし たかし)
TEL: 029-860-4740
FAX: 029-860-4706
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ナノ有機センター 超分子グループ
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