新製法ニオブ・アルミ線材の長尺化と実規模コイル化に成功

世界最高の19.5テスラ (絶対温度4.2度) を発生

2006.05.10


独立行政法人物質・材料研究機構

NIMS 超伝導材料センターは、日立電線(株)、(株)神戸製鋼所、ジャパンスーパーコンダクタテクノロジー(株)からの技術協力も得て、新製法ニオブ・アルミニウム化合物線材の長尺化技術 (1km級) を確立するとともに、その長尺線材性能実証を兼ねて実規模サイズのコイルを試作し、絶対温度 4.2度における超伝導コイル発生磁場としては世界最高の19.5テスラの磁場を発生させることに成功した。

概要

独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 岸輝雄) 、超伝導材料センター (センター長 : 熊倉浩明) 強磁場線材グループの竹内孝夫グループリーダー及び同高温線材グループの北口仁グループリーダーは、日立電線 (株) 、 (株) 神戸製鋼所、ジャパンスーパーコンダクタテクノロジー (株) からの技術協力も得て、新製法ニオブ・アルミニウム化合物線材の長尺化技術 (1km級) を確立するとともに、その長尺線材性能実証を兼ねて実規模サイズのコイルを試作し、絶対温度4.2度における超伝導コイル発生磁場としては世界最高の19.5テスラの磁場を発生させることに成功した。
ニオブ・アルミ化合物線材は、既存のニオブ・スズ化合物線材と比べて機械的ひずみ (電磁応力) が加わったときの超伝導特性の劣化が格段に小さいことから、次世代の強磁場・大型超伝導コイル線材として期待されている。当機構では、10年前にニオブ・アルミ化合物多芯線を生成する独創的な製法 (急熱急冷変態法) を開発し、優れた耐ひずみ性を維持したまま強磁場特性の大幅な向上を可能にしたが、長尺化には (1) 大型ビレットの製造技術と (2) 急熱急冷処理における通電加熱による最高到達加熱温度 (急冷直前の線材温度) を連続して安定かつ一定に保つ制御技術の完成という問題点があり、同時に、これら長尺化技術の確立とともに実規模コイル化の実証が懸案課題であった。
今回、ビレットの大型化を成功させるとともに、最高到達加熱温度を安定させるためにこれまでに重ねてきた工夫を反映した大型急熱急冷装置を新規に開発するなどして、実用化に不可欠とされる1km級長さの長尺化技術を確立した。また、実規模コイルでも昇温速度の制御可能な変態熱処理方法を工夫して、開発した長尺ニオブ・アルミ線材を用いて実規模サイズのコイルを試作した。絶対温度4.2度における超伝導コイルとして世界最高である19.5テスラの磁場発生に成功し、新製法ニオブ・アルミの優れた長尺・均一特性を実証した。
今回得られたニオブ・アルミ線材は機械的ひずみが加わったときにもその臨界電流密度5) 特性が劣化しにくい利点を有することから、NMR6) ・MRI7) などのライフサイエンス超伝導機器や巨大な電磁力が加わる核融合炉・加速器8) などの大型超伝導コイルへの応用が期待される。
これらの結果は5月15日から大阪で開催される低温工学・超電導学会、8月28日から米国シアトルで開催される2006年応用超伝導会議等で発表される。なお、本研究の一部は文部科学省科学技術振興費委託研究 (新方式NMR分析技術の開発) 、15文科振第332号、16文科振第556号および17文科振第 212号の一環として行われた。

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超伝導材料センター 強磁場線材グループ
グループリーダー 
竹内 孝夫(たけうち たかお)
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グループリーダー 
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