世界初 ! 分子の並びかえの様子を直接見た

ナノテクノロジーの究極の技術の一つを実現

2006.03.27


独立行政法人物質・材料研究機構

NIMS若手国際研究拠点は、ナノマテリアル研究所と共同して、修飾ポルフィリン分子が銅基板上で並びかわる様子をリアルタイムで観察することに世界で初めて成功した。

概要

  1. 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 岸 輝雄) 若手国際研究拠点 (拠点長 : 板東 義雄) の Jonathan P. Hill 研究員は、ナノマテリアル研究所 (所長 : 青野 正和) ナノマテリアル立体配置グループの若山 裕 研究員、同原子エレクトロニクスグループの鶴岡 徹 研究員、物質研究所 (所長 : 室町 英治) 超分子グループの中西 尚志 研究員および有賀 克彦 ディレクターと共同して、修飾ポルフィリン分子が銅基板上で並びかわる様子をリアルタイムで観察することに世界で初めて成功した。
  2. 修飾ポルフィリン分子は、様々な電気化学的性質や光学的性質を持っており、有機分子デバイスへの応用が期待されている。その特性を最大限に引き出すためには、それらの分子を欠陥なくきちんと並べたり、自由に並び替えたりすることが必須である。これまでは、対象分子の設計が不適当であったり、観察技術が不完全であったりしたために、このような分子が並び変わる様子を観察することは困難であり、特に、室温のような条件で分子を精密に並んでいる様子を観察するのは重要であるが、極めて難しいと言われていた。
  3. 今回の研究で用いた修飾ポルフィリンは、温度条件によって二つの安定配列 (ヘキサゴナル配列とスクエア配列) を形成するように設計されたものである。この修飾ポルフィリンを昇華させて、銅 (111) 面上に蒸着させると、ヘキサゴナル型の分子配列が基板全体に形成される。これは、低温に保つとヘキサゴナル配列が保たれ、室温下に放置するとスクエア配列に並びかわって行く特長を持つが、本成果は走査型トンネル顕微鏡 (STM) を用いることによってリアルタイムで観察することに成功したもので、このような分子配列のリアルタイム観察は、世界初である。
  4. 今回の成果としてナノテクノロジーの究極の技術の一つが実現できた。今後、この技術をさまざまな分子に応用することにより、完全無欠な有機トランジスターの実現や、各種センサーの開発につながることが期待される。
  5. 本研究は、英国国立化学会の Chem. Commun. に Hot Article (注目論文) として発表される予定であり、掲載号の表紙に採択されている。

「修飾ポルフィリン分子の配列が変わっていく様をリアルタイムで観察した走査型電子顕微鏡像 (A) 。」の画像

修飾ポルフィリン分子の配列が変わっていく様をリアルタイムで観察した走査型電子顕微鏡像 (A) 。



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研究内容に関すること

独立行政法人物質・材料研究機構
ナノマテリアル研究所 ナノマテリアル立体配置グループ
若山 裕 (わかやま ゆたか)
TEL: 029-860-4403
E-Mail: WAKAYAMA.Yutaka=nims.go.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)
(Hill研究員の日本語代理回答者)
物質研究所 超分子グループ
有賀 克彦 (ありが かつひこ)
TEL: 029-860-4597
E-Mail: ARIGA.Katsuhiko=nims.go.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)

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