貴金属使用量を大幅に減らした高性能燃料電池用電極を開発

ダイレクトメタノール型燃料電池用高性能電極の開発に成功

2005.11.28


独立行政法人物質・材料研究機構

NIMSのエコマテリアル研究センターは、携帯機器用の燃料電池として開発が進められているダイレクトメタノール型燃料電池のアノード材料 (として、これまでのPtとRuの合金電極にかわる新しい電極として、Ptと酸化セリウムという金属とセラミックスの複合電極を開発した。

概要

  1. 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 岸 輝雄) 、エコマテリアル研究センター(センター長:原田 幸明)の森 利之 主席研究員と高橋 基 研究員は、携帯機器用の燃料電池として開発が進められているダイレクトメタノール型燃料電池のアノード材料 (負極材料) として、これまでのPt (白金) とRu (ルテニウム) の合金電極にかわる新しい電極として、Ptと酸化セリウム (CeO2) という金属とセラミックスの複合電極を開発した。
  2. 燃料電池の高出力化には「低いオンセットポテンシャル」と「高い電流密度」を示す電極の開発が重要となるといわれているが、今回開発したアノードは、市販で最高の性能を示すといわれるPtRu合金アノードの特性に比べ電極反応における損失 (オンセットポテンシャル) が約30mV低く (452mVを423mVへ低下) 、電流密度も1.5倍に向上 (1.6→2.4mA/cm2Ptへと向上) ) しており、高い電極特性を持つ。
  3. また、高価でありかつ、地球上に存在する量の少ないRuをまったく用いることなく、代わりに鉱物の酸化セリウムを用いることで、環境にやさしく、かつ安価な高性能電極を提供することが可能であり、携帯機器用燃料電池の大幅な普及促進、家庭用コージェネレーションの更なる発展につながるものと期待される。
  4. さらに開発したアノード材料は、市販品の1.5倍の性能を有することから、電極活性を示すうえで中心的な役割を有するPtの使用量を最大で、34%程度は削減可能であると期待されることから、経済性と環境低負荷性を兼ね備えた次世代型燃料電池電極であると考えられる。
  5. 現在、CeO2上に分散したPt粒子の微細化を進めており、より一層の高性能化 (低いオンセットポテンシャルと高い電流密度) が達成されるものと期待される。
  6. 本研究成果は、今年11月30日からつくば市で開催される「第4回機能性発現のための材料創製に関する国際会議」や12月10日に都内日本大学で開催される「第16回日本マテリアルリサーチソサエティー学術シンポジウム」などで、発表される予定。

「図2 PtCeO2(NIMS開発品) と市販のPtRu(Johnson Matthey社製 ) の性能比較  (45回のサイクルを経た後の特性) 。市販の電極に比して、低いオンセット・ポテンシャルを実現。」の画像

図2 PtCeO2(NIMS開発品) と市販のPtRu(Johnson Matthey社製 ) の性能比較 (45回のサイクルを経た後の特性) 。市販の電極に比して、低いオンセット・ポテンシャルを実現。




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TEL : 029-860-4395
FAX : 029-860-4667
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