光導波路中のナノスケール欠陥の観察に成功

光集積回路の検査がナノスケールで可能に

2005.09.27


独立行政法人物質・材料研究機構

NIMSのナノマテリアル研究所 ナノ物性グループは、偏光を利用する近接場光学顕微鏡用プローブの開発により、これまで観察することができなかった微小欠陥や歪みが、光導波路中を伝播する光に与える影響を鮮明に観察することに成功した。

概要

  1. 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 岸 輝雄) 、ナノマテリアル研究所 (所長 : 青野 正和) のナノ物性グループ 木戸 義勇 ディレクター、三井 正 研究員らは、偏光を利用する近接場光学顕微鏡用プローブの開発により、これまで観察することができなかった微小欠陥や歪みが、光導波路中を伝播する光に与える影響を鮮明に観察することに成功した。
  2. これまで情報通信用の光集積回路の評価にはプリズムカプラーを試料に密着させることで屈折率差を無くし、その光を取り出して汎用の光学顕微鏡で観察するという方法が用いられていた。しかしながら、この方法は光の回折限界に制約されるため、波長よりも小さい領域を観察することはできなかった。一方、近接場光学顕微鏡(NSOM)法の一種である導波路 - 集光モードNSOM法は試料表面の近接場を用いるため、光の回折限界の制約を受けず、光の波長よりも小さい領域の観察が可能である。
  3. 導波路 - 集光モードNSOM法は光ファイバープローブ先端の微小開口を極小のプリズムカプラーとして用いる方法であるため、光ファイバー内を光が伝播している間に偏光度が劣化してしまうという問題があった。このため、導波路 - 集光モードにおける偏光観察は困難であり、ナノスケールの欠陥や歪みが生じる散乱や屈折率異常が、偏光特性に与える影響を調べることは難しかった。
  4. 今回開発した偏光を利用したナノスケールの欠陥検査法は、情報通信用に使われる光集積回路内部の損傷を探知する技術として応用が可能であり、これらの素子の評価・開発に寄与できる。さらに、フォトニック結晶では偏光方向により伝播特性が変わることから、その基礎研究における重要なツールとして利用できる。今後の検討では、光スイッチング素子や波長変換材料中での光の伝播特性について調べる予定であり、能動的光集積回路や量子計算機の実現への研究が大きく進むものと期待される。
  5. 本成果は特許出願済みであり、米科学誌Applied Physics Letterに近日掲載予定である。

「図2 圧痕の打ち込みと伝播光の偏光特性の観察  (a) 圧痕と光導波路の位置関係  (b) 偏光保持型ファイバープローブを用いた偏光強度分布の観察」の画像

図2 圧痕の打ち込みと伝播光の偏光特性の観察  (a) 圧痕と光導波路の位置関係  (b) 偏光保持型ファイバープローブを用いた偏光強度分布の観察




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