白色LED用緑色蛍光体の開発に成功

全ての色をLEDで発光することが可能に

2005.03.23


独立行政法人物質・材料研究機構

NIMSの物質研究所 非酸化物焼結体グループは、白色発光ダイオード (LED) 向けの新たな緑色蛍光体の合成に成功し、すでに開発した赤色、黄色の蛍光体と合わせ、白色LEDに必要な基色となる3種類の蛍光体を用いて自然な発色の白色LEDの試作に成功した。

概要

  1. 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 岸 輝雄) 物質研究所 (所長 : 室町 英治) 非酸化物焼結体グループの廣崎 尚登 主席研究員は、白色発光ダイオード (LED) 向けの新たな緑色蛍光体の合成に成功した。すでに開発した赤色、黄色の蛍光体と合わせて、白色LEDに必要な基色となる3種類の蛍光体がそろったことにより様々な発色のLEDを提供することが可能となり、これらの蛍光体を用いて自然な発色 (演色性) の白色LEDの試作に成功した。
  2. 現在の照明は蛍光灯が主流であるが、蛍光灯に比べてLEDは「消費電力3割減」「水銀を使用しない」といった環境面からも、将来は全てLEDに置き換わると予想される。しかし、現行のLEDは青色と黄色の光を混ぜて発光していたため、緑色と赤色の成分が欠如した不自然な光になっていた。そのため、自然な発色が求められる商店の商品照明や食卓などの屋内照明には不適当であり、自然な光を放つ照明用LEDが必要とされていた。白色LEDの演色性を改善するには、不足する成分の光を放つ蛍光体を添加する方法があるが、既存の蛍光体は可視光をあててもほとんど光らず、発光効率が悪いという問題があり、発光強度の高い蛍光体の実現が待ち望まれていた。
  3. 開発した緑色蛍光体は、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化ユーロピウム粉末を混合させ、その後窒化ホウ素製のるつぼに入れて窒素中10気圧、1900℃で反応させて作製した。合成した粉末はEuを含むβ - サイアロン結晶であり、化学的安定性や耐久性に優れている。
  4. 機構が既に開発した赤色蛍光体、黄色蛍光体に加えて緑色蛍光体を使用したところ、青、緑、黄、赤の4色をバランス良く含む太陽光に近い自然な白色の光を放つ事が可能になり、色再現性の指標である演色性Ra値が90を越える自然な照明装置を試作することに成功した。
  5. この成果は3月29日からさいたま市の埼玉大学で開催される第52回応用物理学関係連合講演会で発表の予定である。

「図1 図はNIMSで開発した蛍光体粉末に365nmの紫外線を照射して撮影したもの。左が今回発表のβ - サイアロン緑色蛍光体。中央と右は既に発表したα - サイアロン黄色蛍光体とカズン赤色蛍光体である。全て青色LEDの光で効率よく発光する。」の画像

図1 図はNIMSで開発した蛍光体粉末に365nmの紫外線を照射して撮影したもの。左が今回発表のβ - サイアロン緑色蛍光体。中央と右は既に発表したα - サイアロン黄色蛍光体とカズン赤色蛍光体である。全て青色LEDの光で効率よく発光する。


「図5 中間色のLEDランプ」の画像

図5 中間色のLEDランプ



お問い合わせ先

研究内容に関すること

独立行政法人物質・材料研究機構
物質研究所
非酸化物焼結体グループ 主席研究員
廣崎 尚登 (ひろさき なおと)
TEL: 029-860-4479 (ダイヤルイン)
E-Mail: HIROSAKI.Naoto=nims.go.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)

報道担当

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