高効率な中赤外波長用の変換素子の開発に成功

光共振器を必要とせず、励起用レーザも小型レーザ光源で十分

2005.01.14


独立行政法人物質・材料研究機構

NIMSの物質研究所 光学単結晶グループ、早稲田大学は、世界最長70mmのバルク分極反転波長変換デバイスを実現し、小型レーザ励起の無共振器赤外波長変換に成功した。

概要

  1. 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 岸 輝雄) 、物質研究所 (所長 : 室町 英治) 、光学単結晶グループ (ディレクター : 北村 健二) の栗村 直 主任研究員、早稲田大学の中島 啓幾 教授、丸山 真幸 (早稲田21COE物理・博士課程研究員 (RA) ) 研究員らのグループは、世界最長70mmのバルク分極反転波長変換デバイスを実現し、小型レーザ励起の無共振器赤外波長変換に成功した。
  2. レーザ光に対しては、その利用対象によりさまざまな波長のレーザ光に各方面からのニーズがある。
  3. 中赤外波長域でのレーザ光へのニーズとしては大気環境の計測や医療・バイオなど多方面で利用されている。しかしルビーレーザやYAGレーザなどのレーザ光源はそれぞれ特定の波長しか出せないため、波長変換素子にて特定の波長を望みの波長に変換する技術が待ち望まれていた。
  4. 従来、中赤外領域の波長変換素子としてはホウ酸系波長変換結晶が利用されていたが、これは波長変換効率が低く、実用的なレーザ強度を得るためにはレーザ光の共振器 (増幅器) と励起用の大型のレーザ光源を必要としていた。そのため、ユーザーに高いレベルの技術が要求される・高コストである・大消費電力であるといった問題を抱えていた。
  5. 今回開発した波長変換素子はニオブ酸リチウム化合物 (SLN) で、その結晶構造が周期的に分極反転しているものである。この構造を利用して、従来のホウ酸系波長変換素子に比べて10倍の変換効率を達成できた。言い換えると入射光となる励起用レーザ光源の出力が1/10で良いことになる。これにより、従来は必須であった高価な共振器 (増幅器) 無しでも波長変換が可能となり、さらに小型の励起用レーザ光源の利用も可能になるなど、レーザ光源の小型化、ポータビリティの向上、コストパフォーマンスの向上などが進むと考えられ、実用化に向けその波及効果も多大であると思われる。
  6. 本研究成果は、1月20日から開催のレーザ学会にて発表される予定である。

「図2 : 赤外光への無共振器波長変換特性」の画像

図2 : 赤外光への無共振器波長変換特性


「図4 : 最長デバイスがもたらした革命」の画像

図4 : 最長デバイスがもたらした革命



お問い合わせ先

研究内容に関すること

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