究極のナノデバイス「原子スイッチ」を開発し実用化にも目途

ナノテクノロジーによって生まれた原子スケールデバイス

2005.01.05


独立行政法人物質・材料研究機構
独立行政法人科学技術振興機構
独立行政法人理化学研究所

NIMSのナノマテリアル研究所は、JSTおよび理化学研究所と共同で、原子の移動をナノスケールで制御することによって動作する究極の極微細デバイス「原子スイッチ」を開発し、かつその集積化技術の開発に成功した。

概要

独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 岸 輝雄) ナノマテリアル研究所の青野 正和 所長、長谷川 剛 アソシエートディレクター、中山 知信 アソシエートディレクター、寺部 一弥 主任研究員らのグループは、科学技術振興機構 (JST,理事長 : 沖村 憲樹) および理化学研究所 (理事長 : 野依 良治) と共同で、原子の移動をナノスケールで制御することによって動作する究極の極微細デバイス「原子スイッチ」を開発し、かつその集積化技術の開発に成功した。そして、それを用いて記憶や演算の回路を構築し、その優れた動作特性を確認した。これは、コンピューターエレクトロニクスの発展を加速するものと期待され、我が国独自のナノテクノロジー研究から生まれた大きい成果である。

このたび開発した「原子スイッチ」は、これまでの半導体デバイスが電子の移動を制御することによって動作しているのに対し、原子の移動を制御して動作させる新しい原理のデバイスである。電子より重たい原子の移動を利用するにもかかわらず、ナノ寸法のデバイスを実現することによって、これまでの半導体デバイスを凌駕する機能の実現が可能であることがわかった。この開発は、固体電解質とよばれる物質の特性をうまく利用すれば1個~数個の原子の移動をナノ寸法の精度で制御できるという発見と、その現象の機構を詳細に解明する基礎研究に基づいてなされた。

コンピューターは巨大な数のスイッチの集合体と言えるが、現在そこに用いられている半導体トランジスターのようなスイッチの微細化と高性能化は極限に近づきつつあり、物理的にも経済的にも限界を迎えようとしている。原子スイッチは、半導体スイッチに比べて、「寸法が小さい」、「消費電力が少ない」、「不揮発性である」などの優れた特徴をもつので、いたるところに小型で高性能のコンピューターが存在するユビキタス情報通信社会の実現に寄与するであろう。さらに、「学習機能をもつ」という半導体デバイスでは実現が容易でない特徴を「原子スイッチ」はもつため、人間の脳の神経回路網に類似した機能をもつコンピューターの開発などへの応用も期待される。

この成果は、1月6日発行の英国科学雑誌「ネイチャー」に掲載される。


<「ネイチャー」発表論文>

「図 : 原子スイッチの構造と動作原理」の画像

図 : 原子スイッチの構造と動作原理


「原子スイッチとして用いる場合は、電極位置を固定」の画像

原子スイッチとして用いる場合は、電極位置を固定


論文題名 : Quantized Conductance Atomic Switch (量子伝導原子スイッチ)
著者名 : 寺部 一弥 長谷川 剛中山 知信青野 正和

固体電解質電極 (下側の電極) と金属電極 (上側の電極) 間の1ナノメートル程度の間隙において、金属クラスターの形成と消滅が制御される。
金属電極に負の電圧を印加すると、固体電解質電極表面から金属原子が析出、2つの電極間に金属クラスターが形成されてスイッチがオンとなる。金属電極に正の電圧を印加すると、析出した金属原子が固体電解質電極内に溶け込み、金属クラスターが消滅してスイッチがオフとなる。



お問い合わせ先

研究内容に関すること

独立行政法人物質・材料研究機構
ナノマテリアル研究所 原子エレクトロニクスグループ アソシエートディレクター
長谷川 剛 (はせがわ つよし)
TEL: 029-860-4734
FAX: 029-860-4790
E-Mail: HASEGAWA.Tsuyoshi=nims.go.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)

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