白色LED用赤色蛍光体の開発に成功

新時代の明かり

2004.08.31


独立行政法人物質・材料研究機構

NIMSの物質研究所と、東京工科大学は共同で白色発光ダイオード (LED) 向けの新たな赤色蛍光体の合成に成功した。

概要

  1. 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 岸 輝雄) 物質研究所 (所長 : 渡辺 遵) 非酸化物焼結体グループの廣崎 尚登 主席研究員と、東京工科大学の山元 明 教授、上田 恭太 助手らは共同で白色発光ダイオード (LED) 向けの新たな赤色蛍光体の合成に成功した。
  2. 現在の照明は蛍光灯が主流であるが、蛍光灯に比べてLEDは「消費電力3割減」「水銀を使用しない」といった点から将来は全てLEDに置き換わると予想される。しかし、LEDで白色を合成しようとする場合には青色と黄色の光を混ぜて発光していたため、青白く冷たい光になっていた。そのため、鮮やかな発色が求められるスーパーや商店の商品照明や食卓などの屋内照明には不適当であり、自然で暖かい光とするために赤色蛍光体が必要とされていた。既存の赤色蛍光体は、ブラウン管などに使われているものがあるが、可視光をあててもほとんど光らず、発光効率が悪いという問題があり、発光強度の高い赤色蛍光体の実現が待ち望まれていた。
  3. 今回開発した蛍光体を白色LED作製の際に使用すれば、赤みを帯びた自然で暖かい色の光を放つ事が可能になり、家庭用照明装置などにも適用できる。
    また、従来の蛍光灯と同程度の光を放つことが可能であり、さらに既存のLEDとは違い本蛍光体はマイナス240℃から100℃までの温度範囲で劣化がほとんど無いという極めて優れた特性を持つ。
  4. 本赤色蛍光体は、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化カルシウム、窒化ユーロピウム粉末を水分と空気を遮断したグローブボックス内で混合させ、その後窒化ホウ素製のるつぼに入れて窒素中10気圧、1800℃で反応させて作製した。
  5. LED市場は2010年に1兆円にまで拡大すると予想され、パソコン、テレビ用フラットパネルなどの需要も併せて考えた場合、世界規模で10兆円とまで推定されており、本蛍光体は今後、メーカとの連携の下に2年後の実用化に向け、本格的にLEDと組み合わせた発光特性および信頼性の評価が行われる予定である。
  6. この成果は9月1日から仙台市の東北学院大学で開催される第65回応用物理学会学術講演会で発表の予定である。

「図上段はNIMSで開発した酸窒化物蛍光体。蛍光体粉末を丸い試料ケースに充填して、365nmの紫外線を照射して撮影したもの。中央のNIMSも黄色蛍光体である。上左 (紫色) および上中央 (青色) は酸窒化物にCe3+添加、上右および下左 (緑色) は酸窒化物にEu2+添加、下中央 (黄色) はα - サイアロンにEu2+添加した蛍光体.下右 (赤色) は今回発表のCaAlSiN3にEu2+を添加した蛍光体。図中、下段はNIMSで開発した蛍光体粉末。」の画像

図上段はNIMSで開発した酸窒化物蛍光体。蛍光体粉末を丸い試料ケースに充填して、365nmの紫外線を照射して撮影したもの。中央のNIMSも黄色蛍光体である。上左 (紫色) および上中央 (青色) は酸窒化物にCe3+添加、上右および下左 (緑色) は酸窒化物にEu2+添加、下中央 (黄色) はα - サイアロンにEu2+添加した蛍光体.下右 (赤色) は今回発表のCaAlSiN3にEu2+を添加した蛍光体。図中、下段はNIMSで開発した蛍光体粉末。



お問い合わせ先

研究内容に関すること

物質研究所
非酸化物焼結体グループ 主席研究員
廣崎 尚登 (ひろさき なおと)
TEL: 029-860-4479 (ダイヤルイン)
E-Mail: HIROSAKI.Naoto=nims.go.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)

報道担当

独立行政法人物質・材料研究機構 
広報室
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