スクラップ原料で35mm厚の超微細粒鋼板の試作に世界で初めて成功

数値解析シミュレーションを積極的に活用

2004.05.25


独立行政法人物質・材料研究機構

NIMSの超鉄鋼研究センター 冶金グループは、従来の約1/10の直径1マイクロメートル以下の超微細結晶粒組織からなり、従来の2倍以上の降伏強さを持つ板厚35mm、重量約90kgの厚板の製造に世界で初めて成功した。

概要

  1. 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 岸 輝雄) 超鉄鋼研究センター (センター長 : 長井 寿) 冶金グループの井上 忠信 主任研究員らは、数値解析技術を積極的に活用し、実機製造設備を用いて、従来の約1/10の直径1マイクロメートル (μm/百万分の1m) 以下の超微細結晶粒組織からなり、従来の2倍以上の降伏強さを持つ板厚35mm、重量約90kgの厚板の製造に世界で初めて成功した。
  2. 同センターでは、これまでに微小試験片を用いた基礎実験により結晶粒超微細化の原理を解明し、2001年9月に板厚18mm、重量約20kgの鋼板の製造に成功した (既報) 。今回は、一層の大型化を目指すために、まず精度の高い数値解析シミュレーションで大型化方案を検討し、その方案を精緻な加工技術で実現することにより、板厚35mm、重量約90 kg規模での結晶粒微細化を達成した。加工は株式会社日本製鋼所室蘭製作所に委託し、同社の実機製造設備によって行われた。なお、今回は不純物を含むスクラップを原料とした連続鋳造材 (王子製鉄株式会社製) を用いており、開発した微細粒化プロセスの応用展開性の高さも実証した。
  3. 今回の試作材は、当機構の研究プロジェクト「安全で安心な社会・都市新基盤実現のための超鉄鋼研究」と関連して実施される府省連携プロジェクト「新橋梁構造体に関する研究開発」の要望に応じて、今後供給する予定である。

「写真1 超微細粒の大型試作材の外観。右端が35mm厚の開発鋼板。」の画像

写真1 超微細粒の大型試作材の外観。右端が35mm厚の開発鋼板。



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