独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 岸 輝雄、つくば市千現) 、東京電波株式会社 (取締役社長 : 熊谷 秀男、大田区中央) 、東北大学 (総長 : 吉本 高志、仙台市青葉区) の酸化亜鉛関連材料に携わる研究者らが参加して、産学独の連携によるベンチャー企業「NIMS Wave (株) 」を近日中に発足させる予定です。現在、物質・材料研究機構の認定ベンチャー企業となるための手続きを進行中です。なお、このNIMS Wave (株) は、4番目の物質・材料研究機構ベンチャー企業となります。
近年の技術革新の大きな柱として、窒化ガリウム (GaN) 系発光ダイオードの実現、あるいは、液晶、プラズマをはじめとするフラットパネルディスプレーといった視覚用デバイスが上げられます。こうした視覚デバイスにあっては、透明であり、かつ、電気的な機能を持った材料の開発が重要な技術課題になります。こうした中、酸化亜鉛という材料は可視光に対して透明であり、かつ、その電気的特性の制御が可能であることから、ディスプレー等の視覚デバイス、さらには、太陽電池などのエコ関連デバイスにおいて、透明電極、あるいは、透明電子素子に応用されることが期待され、世界中でその研究開発が進められています。また、窒化ガリウムを超える高い性能を持った発光ダイオードを実現できる可能性も指摘される興味深い材料です。
今回発足したNIMS Wave (株) は、この酸化亜鉛材料、特に、酸化亜鉛単結晶基板 (ウエハー) の高度な利用技術に関する蓄積を企業化するという主旨で発足しました。酸化亜鉛は、窒化ガリウムに匹敵する高いポテンシャルを持った材料であり、特に、可視光から紫外線の領域にわたる発光素子の材料としてその応用が期待されています。こうした素子の高品質化、高性能化には、高品質な単結晶ウエハーの製造とその単結晶の加工技術、さらに、ウエハー上への素子の形成技術の全てが連携して進められる必要があります。今回発足したNIMS Wave は産官学連携によってこの酸化亜鉛の高度な利用技術の開発とその市場への供給を通して、社会に貢献することを目指しています。
物質・材料研究機構はこれまでに、セラミックスの材料として、また、半導体材料としての酸化亜鉛の物性制御、構造制御についての技術を蓄積してきています。特に、平成14年度からの2年間、文部科学省の施策である「大学等発ベンチャー創出支援制度」 の補助により、酸化亜鉛単結晶ウエハーの高度な利用技術について開発を進めてきました。一方、東京電波株式会社は東北大学との連携において酸化亜鉛単結晶の育成技術、特に、水熱合成法による大型酸化亜鉛単結晶成長技術の開発を進めてきました。双方の技術を融合し、酸化亜鉛単結晶を利用したデバイス開発を加速することに、NIMS Wave の意義があります。
当初、国内外の研究機関を対象に、試作用ウエハー、特に、基板の平坦化ウエハーや各種コーティング済みのウエハーの提供を行います。あわせて、さらに高品質なウエハー、あるいは、より高度なコーティング処理を施したウエハーの開発を進め、酸化亜鉛ウエハーを利用した電子素子の開発を推進します。