高出力緑色レーザ用波長変換デバイスの作製に成功

2004.03.23


独立行政法人物質・材料研究機構

NIMSの物質研究所 光学単結晶グループは、定比組成タンタル酸リチウム結晶内のドメイン (分域) を制御することで、高出力緑色発生用の波長変換デバイスを作製し、シングルパスで平均出力4.4 ワットという高出力を実現した。

概要

独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 岸 輝雄) 、物質研究所 (所長 : 渡辺 遵) 、光学単結晶グループ (ディレクター : 北村 健二) の栗村 直 主任研究員らのグループは、定比組成タンタル酸リチウム (Stoichiometric LiTaO3 : SLTと略称) 結晶内のドメイン (分域) を制御することで、高出力緑色発生用の波長変換デバイスを作製し、シングルパスで平均出力4.4 ワット (W) という高出力を実現した。従来よりも小型・低消費電力なレーザディスプレイへの応用やアルゴンレーザの小型化などが期待される。将来的には、現在家庭およびオフィス内で使用されている液晶プロジェクタが、より小型・低排熱で利用できることになり、次世代大画面テレビへの展開も期待できる。

光学単結晶グループでは、従来から強誘電体単結晶を用いて、分極反転構造による波長変換デバイスの材料とデバイス開発で世界を先導してきた。しかし、従来の強誘電体単結晶であるニオブ酸リチウム (LiNbO3 : LNと略称) やチタン酸リン酸カリウム (KTiOPO4 : KTPと略称) を用いた波長変換デバイスでは、高出力波長変換時に熱によるビーム形状の劣化や出力不安定が起こるなど、システム化に向けて問題を抱えていた。

今回、SLTに周期分極反転構造を周期8µmで作製し、厚さ1mmの波長変換デバイスを実現した。SLTでは、材料の熱伝導率が高いことから、熱の散逸が大きく、高出力時の安定性が向上した。この結果、レーザディスプレイなどで要求される1Wレベルを超えて、緑色光で4.4W出力が得られた。また、厚さ1mmと厚いデバイスが実現できたことで、ビームの調整も容易になることから、モジュール化の際のコストも低下できるものと思われる。

なお、本研究成果は、3月28日から東京工科大学 (東京都八王子市) で開催される応用物理学会で発表される予定である。

「波長変換デバイスによる緑色光発生」の画像

波長変換デバイスによる緑色光発生




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