【受賞者】
小川由希子 (構造材料研究拠点 研究員)
【業績名】
世界初の形状記憶マグネシウム合金を開発 : 次世代構造材料として医療や宇宙への応用拡大に貢献
【研究内容】
自動車の燃費改善、電子デバイスの携帯化、医療装置用材料としての新たな利用において材料の軽量化がこれまで以上に求められています。マグネシウム合金は実用金属のなかで最も軽量な材料である反面、加工性が悪いという欠点からその用途は限られています。
本研究では、マグネシウムにスカンジウムを加えることで、マグネシウム合金においては不可能と見なされていた構造変化 (温度によって二種類の構造を自由に行き来できること) の利用による機械的特性の制御を実現しました。これにより、従来品に比べ加工性と強度のバランスに優れたマグネシウム合金を得ることに成功しました。また、えられなかった機能性を世界で初めて発見しました。
開発に成功した合金は報告されている形状記憶合金の中で最も軽く、従来の形状記憶合金に比べ70%程度の軽量化に成功しています。この優位性により、人工衛星のフレームなど打ち上げコスト削減のために軽さが求められる宇宙材料への応用が期待できます。小川氏の研究チームは今後、実用化に向けて、さらなる強度の向上や現状マイナス100℃以下の低温で得られる形状記憶特性を室温でも可能にするなど特性向上に取り組んでいきます。また、同チームは、形状記憶特性とマグネシウムの持つ生分解性を生かし、狭くなった血管を広げやすく、かつ治療完了後体内に吸収される治療に利用できる人に優しいステント (埋込型医療機器) 用材料としての適用を目指しており、生分解性や生体適合性などの特性について研究を進めています。