2018年「ロレアル—ユネスコ女性科学賞—国際新人賞」をNIMS研究者が受賞

2018.03.08
(2018.03.20 更新)


ロレアルグループとユネスコが将来を期待される若手女性科学者を表彰する2018年「ロレアル - ユネスコ女性科学賞—国際新人賞」の受賞者15名が発表され、日本からはNIMS構造材料研究拠点の小川由希子研究員が受賞しました。フランス・パリで開催される授賞式 (現地時間3 月21 日) において表彰されます。

「ロレアル - ユネスコ女性科学賞—国際新人賞」は、ロレアルグループによって2014 年から設けられた賞で、生命科学、物理、化学、工学、数学の分野で世界的に評価されるトップ15 名の若手女性科学者が表彰され、各受賞者に奨学金15,000 ユーロ (約200 万円) が贈呈されます。

小川研究員は、世界で初めてマグネシウム合金における形状記憶特性を発見した研究が評価されての受賞になります。受賞について小川研究員は「同賞は女性研究者を後押しすると同時に、研究内容をより広く知っていただく機会につながり大変有難く感じております。物質科学は近代社会の土台です。素材の特性を改良し、新素材を開発することによって、抜本的な技術革新に携わりながら世の中の縁の下の力持ちのような研究者になれればと思っております」と受賞の喜びを語っています。小川研究員は、2017 年「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」の受賞に次いでの受賞となります。

受賞詳細

関連画像
【受賞者】
小川由希子 (構造材料研究拠点 研究員)

【業績名】
世界初の形状記憶マグネシウム合金を開発 :  次世代構造材料として医療や宇宙への応用拡大に貢献

【研究内容】
自動車の燃費改善、電子デバイスの携帯化、医療装置用材料としての新たな利用において材料の軽量化がこれまで以上に求められています。マグネシウム合金は実用金属のなかで最も軽量な材料である反面、加工性が悪いという欠点からその用途は限られています。

本研究では、マグネシウムにスカンジウムを加えることで、マグネシウム合金においては不可能と見なされていた構造変化 (温度によって二種類の構造を自由に行き来できること) の利用による機械的特性の制御を実現しました。これにより、従来品に比べ加工性と強度のバランスに優れたマグネシウム合金を得ることに成功しました。また、えられなかった機能性を世界で初めて発見しました。

開発に成功した合金は報告されている形状記憶合金の中で最も軽く、従来の形状記憶合金に比べ70%程度の軽量化に成功しています。この優位性により、人工衛星のフレームなど打ち上げコスト削減のために軽さが求められる宇宙材料への応用が期待できます。小川氏の研究チームは今後、実用化に向けて、さらなる強度の向上や現状マイナス100℃以下の低温で得られる形状記憶特性を室温でも可能にするなど特性向上に取り組んでいきます。また、同チームは、形状記憶特性とマグネシウムの持つ生分解性を生かし、狭くなった血管を広げやすく、かつ治療完了後体内に吸収される治療に利用できる人に優しいステント (埋込型医療機器) 用材料としての適用を目指しており、生分解性や生体適合性などの特性について研究を進めています。