3次元アトムプローブ(3DAP)の原理

3次元アトムプローブ(3DAP)の原理

 1988年にオックスフォード大学のA. Cerezoらにより開発された位置敏感型アトムプローブ(position sensitive atom probe, PoSAP)は、アトムプロー ブの検出器に位置敏感型検出器(position sensitive detector)を取り入れた もので、従来のアトムプローブで分析領域選択のために用いられていたプローブホールを用いずに、位置敏感型検出器に到達した原子の飛行時間と位置を同時に測定することのできる装置である。この装置を用いれば試料表 面に存在する合金中の構成元素を原子レベルの空間分解能で2次元マップと して表示する事が出来るばかりでなく、電界蒸発現象を用いて試料表面を一原 子層ずつ蒸発させることにより、2次元マップを深さ方向に拡張していくこと が出来る。このデーターをコンピューターで蓄積し再構成することにより、合 金中の原子の分布を3次元的に再構成することができる。この手法は、従来のアトムプローブの分析領域がプローブホールのカバーする極めて微細な領 域に限られるという欠点を克服しただけでなく、個々の原子の位置をサブナノ メーターの分解能で決定することの出来るユニークな分析手法である。
図1 3次元アトムプローブの模式図
 位置敏感型アトムプローブでは、位置検出器の特性から同時に2個以上のイ オンが検出器に到達した場合にはこれらのイオンの位置測定が不可能になると いう欠点があるが、これを改善するためにフランスのルーアン大学のグループ は位置検出器として100個の陽極を用いた多重検出システムを採用し、これを 断層アトムプローブ(Tomographic Atom Probe, TAP)と名付けた。いずれに してもイオンの飛行時間測定と位置検出を同時に行なうという点においては PoSAPと原理的には同じであり、さらにこれらのデータを再構築することによ り原子位置に関する3次元的な情報が得られるということで、これらのアトム プローブは総称して3次元アトムプローブ(Three Dimensional Atom Probe, 3DAP)と呼ばれている。
図2 400 Cで長時間熱処理されたCr-20Fe合金の3次元アトムプローブによる 2次元元素マップと濃度マップ。
 3次元アトムプローブによりえられた元素マッピングの例が図2に示されてい る。分析領域はおおよそ20 x 20 nmであり、個々の点は原子が検出された位置 をしめしている。青い点がCr原子、赤い点がFe原子に相当し、このデーターか らFe原子の集まった微細な析出物が分析領域内に存在していることが分かる。 濃度マッピングは元素マッピングから各原子の個数を計算し、そこから0.4 x 0.4 nmをピクセルとして濃度の情報を示したものである。

 このような2次元の元素マップを連続的に収集し、原子が収集される順序に比例するz座標を与えれば、図3のように、合金中の元素の3次元トモグラフィーを得ることができる。このように3次元ア トムプローブを用いれば、これまでのどのような解析手法よりも高い分解能で 原子の存在位置を決定することができる。
図3 Nd-Be-B-Cu合金から得られた3次元原子トモグラフィー。緑はNd原子、赤は銅原子を示す。
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