プレス発表

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疲労データシート No.96 の発行について
平成16年 7月 7日
独立行政法人 物質・材料研究機構

【概 要】

 独立行政法人 物質・材料研究機構(理事長:岸 輝雄)は、中期計画における知的基盤の充実に向けた取り組みの一環として、

NIMS FATIGUE DATA SHEET No. 96

 溶接構造用圧延鋼SM490B荷重非伝達すみ肉溶接継手の疲労特性データシート

 − 板厚の効果(その1,板厚 9mm)−』 を発行した。

 今回発行したデータシートは、橋梁等で使用されるSM490B鋼に関して、108回までの溶接継手の疲労*1特性を明らかにしている。

 当機構では、平成14年5月20日に認証を受けたISO9001 “Quality management system” (JIS Q 9001「品質マネジメントシステム*2」)に従い、データシート発行業務の運営を行っている。

 

【発行内容について】

 橋梁、船舶などの構造物は溶接施工が行われているが、溶接部は引張の残留応力*3が発生するため疲労強度が著しく低下する。更に、疲労強度は板厚に影響されることから、今後板厚を9mmから160mmまで系統的に変えたデータシートを作成する計画であり、今回は板厚9mmの溶接継手の108回長期疲労特性を明らかにしている。

 

【発行に伴う波及効果について】

 当機構のデータシートは中立的な立場から試験規格(JIS規格疲労試験法など)に従い、信頼性の高いデータを30年以上にわたって公表してきた。今回のデータシートも、国内外の約650機関(国内400、国外250)に配布することにより、機械、構造物の強度設計における設計応力の設定や材料選択等での基盤的な材料強度物性データとして、また、長期間使用された各プラント等の金属材料の劣化状況や余寿命評価等を判断する場合の基準的参照データとして、幅広く活用されることが期待される。

 金属材料の疲労強度に加え、クリープ、腐食、及び極低温強度に関する系統的なデータの公開が、平成13年度から当機構材料基盤情報ステーションのプロジェクトとして開始されている。これらの知的基盤の充実に向けて当機構は積極的に取り組んでいる。

 

<用語説明>

  *1  疲労

材料が、繰返しの荷重、またはひずみを与えられた際に破損する現象。

  *2  JIS Q 9001 品質マネジメントシステム

JIS Q 9001(ISO 9001)とは、製品品質そのものでなく、品質システムについての規格で、より良い製品(ここではデータシートが製品にあたる)を生み出すために品質保証の仕事の方法が決められている。

  *3  残留応力

残留応力とは、外力が作用していないにもかかわらず材料の表面および内部に存在する応力のことである。溶接施工中には熱の冷却過程で起こる収縮によって応力が誘起され溶接部周辺に応力が残り、残留応力となる。この残留応力は材料の機械的・物理的性質に大きな影響を及ぼすことが知られている。


<問合せ先>
 独立行政法人 物質・材料研究機構
    広報室  TEL 029-859-2026  FAX 029-859-2017


<内容に関する問合せ先>
 独立行政法人 物質・材料研究機構
 材料基盤情報ステーション
    疲労研究グループ  主任エンジニア  前田芳夫
    TEL 029-859-2551  FAX 029-859-2201