独立行政法人 物質・材料研究機構における

疲労データシートNo.91, No.92の発行について


                                         平成15年 5月28日

独立行政法人 物質・材料研究機構

 

【概 要】

 独立行政法人 物質・材料研究機構(理事長:岸 輝雄)は、中期計画における知的基盤の充実に向けた取り組みの一環として、

  1. 『NIMS FATIGUE DATA SHEET No. 91
    溶接構造用圧延鋼SM490B荷重非伝達すみ肉溶接継手の疲労特性データシート −残留応力の効果−』

  2. 『NIMS FATIGUE DATA SHEET No. 92
    チタン合金Ti-6Al-4V(900MPa級)のギガサイクル疲労特性データシート』

の2冊を発行した。

 今回発行したデータシートは、No. 91では橋梁等で使用されるSM490B鋼に関して、108回までの溶接継手の疲労*1特性を明らかにしている。また、No. 92ではチタン合金Ti-6Al-4Vに関して、これまでに得られた108回疲労特性に加えて、ギガサイクル*2域における疲労特性を取り上げ、その特性を明らかにしている。
 なお、物質・材料研究機構では、平成14年5月20日に認証を受けたISO9001“Quality management system” ( JIS Q 9001「品質マネジメントシステム*3」)に従い、データシート業務の運営が行われている。

 

【発行内容について】

  1. 疲労データシートNo.91(溶接継手)

橋梁、船舶などの構造物は溶接施工が行われる。溶接部は引張の残留応力が発生するため、疲労強度が著しく低下する。残留応力が導入された状態を再現する試験法による105サイクルから108サイクルまでの溶接継手の疲労強度を明らかにしている。

   2. 疲労データシートNo.92(チタン合金)

チタン合金は、航空機をはじめ軽量で高強度が必要となる機械や部品に多く使われている。本データシートでは、Ti-6Al-4V合金(900 MPa 級)について、試験周波数が20 kHz の超音波疲労試験機により、1010サイクル(百億サイクル、10ギガサイクル)までの超高サイクルにおける疲労寿命特性を室温で系統的に明らかにしている。

 

【発行に伴う波及効果について】

  当機構のデータシートは中立的な立場から厳しい試験規格に従い、信頼性の高いデータを30年以上にわたって公表してきた。今回のデータシートも、国内外の約650機関(国内400、国外250)に配布することにより、機械、構造物の強度設計における設計応力の設定や材料選択等での基盤的な材料強度特性データとして、また、長期間使用された各プラント等の金属材料の劣化状況や余寿命評価等を判断する場合の基準的参照データとして、幅広く活用されることが期待される。
金属材料の疲労強度に加え、クリープ、腐食、及び極低温強度に関する系統的なデータの公開が、平成13年度から当機構の材料基盤情報ステーションのプロジェクトとして開始されている。これらの知的基盤の充実に向けた取り組みは、世界に類のないプロジェクトとして産学官の各界において強く支援され、また、国際的にも強く期待されている。

<用語説明>

 *1 疲労
     材料が、繰返しの荷重、またはひずみを与えられた際に破損する現象。

 *2 ギガサイクル
     109サイクルのこと。ここでは1010サイクルまでのデータと云う意味でギガサイクルと呼んだ。

 *3 JIS Q 9001 品質マネジメントシステム
     JIS Q 9001(ISO 9001)とは、製品品質そのものでなく、品質システムについての規格で、より良い製品
     (ここではデータシートが製品にあたる)を生み出すために品質保証の仕事の方法が決められている。

 

問い合わせ先

  独立行政法人 物質・材料研究機構
  広報室  TEL 029-859-2026 FAX 029-859-2017

 

研究内容に関する問い合わせ先

  独立行政法人 物質・材料研究機構
  材料基盤情報ステーション

      No.91担当  疲労研究グループ 主任研究員 鈴木 直之
               TEL 029-859-2548 FAX 029-859-2501

      No.92担当  疲労研究グループ 主任研究員 宮原 健介
               TEL 029-859-2255 FAX 029-859-2201

      目黒業務室      TEL 03-3719-2551 FAX 03-3719-2177