独立行政法人 物質・材料研究機構における

疲労データシートNo.87, No.88, No.89, No90の発行について


                                         平成14年 6月 1日

独立行政法人 物質・材料研究機構

 

【概 要】

独立行政法人 物質・材料研究機構(理事長:岸 輝雄)は、中期計画における知的基盤の充実に向けた取り組みの一環として、

1. 『NIMS FATIGUE DATA SHEET No. 87

ばね鋼SUP7(2.0Si-0.8Mn)のギガサイクル*1疲労*2特性データシート』

2. 『NIMS FATIGUE DATA SHEET No. 88

フェライト系耐熱鋼(9Cr-2W)の長期高温低サイクル疲労*3特性データシート』

3. 『NIMS FATIGUE DATA SHEET No. 89

チタン合金Ti-6Al-4V(1100MPa)の疲労特性データシート』

4. 『NIMS FATIGUE DATA SHEET No. 90

溶接構造用圧延鋼SM570Q荷重非伝達すみ肉溶接継手の疲労特性データシート −残留応力の効果−

  の4冊を平成14年3月31日付けで発行した。

 

今回の発行内容は、長期疲労データシートとして、ギガサイクル疲労では1010サイクル、ひずみ制御試験では107サイクル、大型溶接継手材では108サイクルなどのようにこれまでほとんど存在しなかった超高サイクル域までの疲労特性データシートとなっている

 

【発行内容について】

1. 疲労データシートNo.87(ギガサイクル疲労)

     ばね鋼SUP7は自動車、機械一般に広く使用されている金属材料である。1010サイクル(百億サイクル、10ギガサイクル)という長期データを、周波数100Hzで3年を要して取得したもので、世界に類を見ない。長期疲労では、介在物を起点する疲労破壊が発生し、疲労強度が低下する事などを明らかにしている。

 

2. 疲労データシートNo.88(高温疲労)

ボイラーなど火力発電プラント用の9Cr-2W鋼は、日本で開発され、国内外で規格化された新しいフェライト系耐熱鋼である。この材料について、ひずみ制御試験による102サイクルから107サイクルまでの広範囲な疲労寿命特性を室温から700℃の5温度条件で系統的に明らかにしている。

 

3. 疲労データシートNo.89(チタン合金)

     チタン合金は、航空機をはじめ軽量で高強度が必要となる機械や部品に多く使われている。この材料について、荷重制御、及びひずみ制御試験による102サイクルから108サイクルまでの広範囲な疲労寿命特性を室温で系統的に明らかにしている。

 

4. 疲労データシートNo.90(溶接継手)

橋梁、船舶などの構造物は溶接して作られる。溶接部は引張の残留応力が発生するため、疲労強度は著しく低下する。残留応力が入った状態を再現する新しい試験法による105サイクルから108サイクルまでの溶接継手の疲労強度を明らかにしている。

 

【発行に伴う波及効果について】

当機構のデータシートは中立的な立場から厳しい試験規格に従い、信頼性の高いデータを30年以上にわたって公表してきた。今回のデータシートも、国内外の約650機関(国内400、国外250)に配布することにより、機械、構造物の強度設計における設計応力の設定や材料選択等での基盤的な材料強度特性データとして、また長期間使用された各プラント等の金属材料の劣化状況や余寿命評価等を判断する場合の基準的参照データとして、幅広く活用されることが期待される。

金属材料の疲労強度に加え、クリープ、腐食、及び極低温強度に関する系統的なデータの公開が、平成13年度から当機構の材料基盤情報ステーションのプロジェクトとして開始され、今回がはじめての成果発表となった。これらの知的基盤の充実に向けた取り組みは、世界に類のないプロジェクトとして産学官の各界において強く支援され、また、国際的にも強く期待されている。

 

 

<用語説明>

*1 ギガサイクル

    109サイクルのこと。ここでは1010サイクルまでのデータと云う意味でギガサイクルと呼んだ。

*2 疲労

    材料が、繰返しの荷重、またはひずみを与えられた際に破損する現象。

*3 低サイクル疲労

    一般には約104サイクル以下を低サイクル、それ以上のサイクルを高サイクルと呼ぶが、ここでは特にひずみ制御の試験の意味で用いた。

 

 

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