切削屑を直接固化成形して素材を上回る材料に再生するプロセス

材料創製研究グル−プ 主任研究員 太田口 稔

キ−ワ−ド:機械切削屑、固化成形、回生不純物

 機械切削屑は、他の金属スクラップと一緒に再溶解され、素材と全く違う鋳物等として再利用されているのが現状です。本研究項目においては、この切削屑を再熔解をしないで不純物を積極的に利用し、素材の優れた特性をできる限り保持できる新しい材料再生プロセスを探索しています。

超鉄鋼プロジェクトで、強加工した粉末および表面が酸化している純鉄粉末を鉄シ−スに充填し強加工を加えると、健全な固化成形体が得られました。強加工粉末では超微細粒組織が生成され、また純鉄粉末では粉末表面の酸化物が微細化に重要な役割を果たしていることを明らかにしております。

本研究では、これらの方法や知見を応用して、表面が酸化している切削屑を直接固化成形し、素材との機械的性質を比較検討しました。供試材は、機械構造用Cr-Mo鋼(SCM435)、チタンα-β型合金(Ti6Al4V)の機械切削屑を用いました。

切削屑をシ−ス缶(S45C)に真空封缶し、圧延加熱温度700〜1100℃にて孔型ロ−ルで固化成形しました。得られた固化成形体は、圧延温度によらず素材相対密度99.6%以上示し、光学顕微鏡観察では、ボイドなどは認められませんでした。

SCM435鋼の固化成形体の引張強さは、圧延温度と共に上昇し、素材の879MPaに対し、900℃で1059MPa、1100℃では1160MPa、また全伸びも素材の14%よりも2〜3%上回っていました。

Ti6Al4V合金では、素材の引張強さは976MPaであるが、圧延温度700℃で1309MPa、900℃で1199MPa、1100℃では1208MPaといずれも素材よりも上回っております。

全伸びは6〜15%であり素材の19%よりも若干劣りました。

これらのことから、切削屑を再溶解せずに直接固化成形する方法により、高性能な素材を創り出すことができる新しいアイデアの一つだと考えております。

今後はステンレス鋼、純チタンおよびアルミ系(室温での固化成形)を対象材料と考えております。

参考文献 

太田口、長井:日本金属学会2001年秋期(第129回・福岡)大会講演概要集、P139.

特許

名称「ダライ粉の固化成形方法」 出願番号:特願2001-177016.