アルミニウムを含有した鋳鉄の可能性 材料創製研究グループ 研究員 高森晋 キーワード:鋳鉄 アルミニウム スクラップ 高温酸化 耐摩耗 私どもでは、鉄とアルミニウムが混ざった材料を鋳鉄の原料として利用するという研究を行っております。地方自治体におきましては、大量に発生する飲料缶を遠方まで輸送することなく処理したいという要望があります。そこで、スチール缶を鋳鉄の原料として利用できないかということを考えました。 スチール缶は飲み口の部分がアルミニウム合金でできております。これは分離しにくく、チップしても6割ほどのアルミニウムはスチールに付いたままだそうです。したがいまして、スチール缶を溶解原料としてリサイクルすると、アルミニウムが不可避的に混入してくることになります。 鋳鉄にアルミニウムが入った材料が利用可能なものであれば、その原料としてスチール缶が使えると考えられます。またスチール缶のほか、鋳鉄製シリンダライナーを鋳ぐるんだエンジンブロックなども、原料として利用できると考えられます。 このようなことから、鋳鉄にアルミニウムを添加してどのような特性が得られるか実験をおこなっております。 鋳鉄にアルミニウムを添加することにより、例えば耐高温酸化性が向上することがわかりました。これは、表面にアルミナの相が形成されるためで、この相が酸素の拡散を抑制しているからです。 また、アルミニウム10%massから16mass%のあたりで鉄アルミのカーバイドが析出してまいります。そのため硬度が増し耐摩耗性に優れた材料となります。普通鋳鉄で50mm摩耗する条件において12mass%アルミニウムの入った鋳鉄ではわずか0.015mmの摩耗になりました。 この系は、鉄・炭素・シリコン・アルミニウムと資源として豊富な元素のみから構成されており、環境負荷が小さいというメリットがあります。今後、この系の更なる可能性を探っていきたいと考えております。 参考文献 高森、木村、大澤:日本鋳造工学会第138回全国講演大会講演概要集,(2001,5)P15 高森、西田、木村、大澤:日本鋳造工学会第139回全国講演大会講演概要集,(2001,10)P21 高森、大澤、原田:第45回日本学術会議材料研究連合講演会講演論文集,(2001,9) P27
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