フェライト-パーライト鋼の応力-ひずみ曲線におよぼす温度,ひずみ速度とフェライト粒径の影響

材料創製研究グループ 科学技術振興事業団 土田紀之

キーワード:応力-ひずみ曲線,温度,ひずみ速度,フェライト結晶粒径

リサイクル材を実用化するためには、不純物が組織におよぼす影響や、不純物を含んだ材料の特性について明らかにする必要がある.また、リサイクル材の高強度化としては不純物であるPの固溶強化を積極的に利用することと、結晶粒微細化のふたつを考えている.

本研究項目においては、「超微細鋼の応力-ひずみ関係」について研究を進めている.超微細組織におよぼす不純物の影響、例えば、不純物含有量とその特性変化や結晶粒微細化におよぼす不純物の影響(種類や含有量)、また超微細鋼の変形特性などが明らかになることによって、不純物を含んだ超微細粒材を対象としたリサイクル材実用化に向けての適用範囲の拡大が期待できると考えられる.

本研究では、超微細鋼の高速変形を熱活性化過程に基づいたモデリングによりシミュレーションすることを主な目的として研究を進めているが,現在までに,同じ化学組成のJIS-SM490相当鋼を用いてフェライト粒径の異なる3種類のフェライト-パーライト(FP)鋼を作製し,常温以下における静的引張試験を行った.これらにより,FP鋼の引張変形応力におよぼす温度,ひずみ速度,フェライト粒径の影響に関し整理を行った.

その結果,以上のことが明らかになった.

  1. 結晶粒微細化により,変形応力はホール・ペッチ則に従い増大する.
    一方で各温度における均一伸び,全伸びは微細化により減少する.
    加工硬化率は,フェライト粒径によらず温度のみにより変化する.

  2. リューダース変形域以降の均一変形域における変形応力の温度・ひずみ速度依存性はほぼ等しい.変形応力の粒径依存性を表す. ホール・ペッチ式の傾きは温度とひずみには依存しない.

今後はこれらの実験結果を整理し,熱活性化過程に基づいたモデリングでの解析を試みるとともに,ひずみ速度100/s以上の引張試験を行っていく予定である.

なお本報告に関する実験結果等は,以下に整理されている.

http://www.nims.go.jp/millennium/member/b-home%20page/Main%20page.html