「組織制御溶解装置機能改善について」
超鉄鋼研究センター 冶金グループ 森 俊博
縁あって「リサイクル鉄の超鉄鋼化」プロジェクトに装置担当として、溶解装置の立ち上げの段階から関わって1年が経過した。現在のところ50mm厚薄スラブの凝固組織を良く模擬するところまで完成し、これからは再現性のある試料をどんどん提供して新機軸の鋼を作り出す段階になってきた。
新たな物(鋼)を世に送り出すには、従来のやり方を踏襲していたのでは大きな変化を期待できない。
まだ誰も試みていない方法を用いることにより、その可能性は大きくなる、そのためにはテスト装置も既存(従来方式)のままでのテストでは、必要としているデータが得られにくく、目的に合致したテスト装置が必要になる。
ここに我々設備屋の腕を振るう出番がある。研究者が必要とする機能を持つ装置を提供する事が出来ると、開発のスピードは上がり新たな発見へと一歩前進できるが、装置制作段階でもたもたしていたのでは肝心のデータが得られないことになる。そのためには従来からの方法にとらわれず、豊富な経験の下に新機能を考案する柔軟な思考がないと、目的を満足させる装置は生まれてこないと常々考えている。
今回の溶解装置を例に取ると、鋼に新たな機能の組織を得るために凝固・冷却課程において、超急冷却テストや緩冷却テストもあり、または急・緩併用したり等のいろんな機能が提案され、この目的に合致した装置を考案する必要がある。
このことは、車に例えれば軽の小回り、スポーツ車のスピード感、高級車の乗り心地良さを備え、ここに大衆車の手軽に手にいる費用を加味したような装置を提供する必要がある。
それほど最近の研究開発には、装置としても従来発想では間に合わない能力を要求されているのである。
私自身は、いまだ世に無い(私が知らない?)機能の装置を作り出す際には、初めから完璧でなくても、本筋さえ間違えていなければ90%以上の効果が発揮出来ればよしとしている。これは基本機能発揮できるがちょっと作業性が悪いとか、または使ってみなければ解りにくい所、自分で気が付かなかった所等があるかもしれないということですが。
後は基本型さえあれば、装置を使用しながらみんなの知恵で使い易い、目的のデータが採取し易い装置に仕上がってくれば、自然と装置に愛着を持って接してもらえ、そのことによって新たな機能も発揮出来る装置に仕上がってき、又別の思わぬ発見にも繋がって行くと信じて世に装置を送り出している。
「一人では限界がある」
なお、本装置はプロジェクトホームページで紹介されている。
----------------------------------------------------------------------
***第7回超鉄鋼ワークショップ案内
平成15年6月24日(火),25日(水)につくば国際会議場にて第7回超鉄鋼WSが開催されます。ミレニアムプロジェクトでは下記に示します2つのセッションをコーディネートしておりますので,奮ってご参加いただければ幸いです(WSに関する詳細はホームページを参照ください (http://www.nims.go.jp/USWS/)。
6/25 技術討論会 4 「不純物を考慮した高機能化―新部品成形法」
このセッションでは、リサイクル鉄をベースにcar-to-carの循環型社会を目指す技術を討論することを目的とする。特にリサイクルから混入が避けられないCu等の不純物が入ってきた場合のプロセスおよび材質を主眼として、自動車部品の製造に関与する工程全般に渡って展望し、その問題点抽出と将来の環境問題対策解決に繋がるブレイクスルー技術の可能性について討論していきたい。 座長:伊藤公久(早大)
09:00 |
自動車用新部品鍛造技術とシミュレーション
石川孝司(名大)
|
09:35 |
薄鋼板製造技術の現状と今後の課題
阿部光延 |
10:10 |
鉄鋼材料のトランプエレメント・Cu問題に対する上工程からの視点
溝口庄三(東北大)
|
10:45 |
休 憩 |
11:00 |
自動車用鉄鋼材料のハイドロフォーミング
真鍋健一(東京都立大)
|
6/25 研究要素討論会4 「鉄源の多様化に対応した新しい鉄創り」
このセッションでは、将来のリサイクル鉄の増加、鉄鉱石の低品位化を睨んだ21世紀の新製鉄プロセスを模索することを目的としている。特に、ミニミル、直接薄板鋳造等、将来の鉄鋼製造プロセスを生かしたリサイクル材、低品位鉄源の利用における問題点解決といった斬新な視点で将来の鉄鋼プロセスを展望したい。 座長:伊藤公久(早大)
13:15 |
北米で用いられる付加価値を付けた鉄鋼材料の生産
A. J. DeArdo (Univ. of Pittsburgh, 米)
|
13:50 |
リサイクルの観点からの中国における鉄研究紹介
D. Cang (Univ. of Science and Technology Beijing, 中国)
|
14:25 |
鋼のCu(+Sn)起因表面赤熱脆性に及ぼす諸因子の影響
柴田浩司 (東大)
|
15:00 |
休 憩 |
15:15 |
鉄鋼業におけるLCA的見地からの鉄鋼技術開発の展望
原田幸明 (NIMS)
|
15:50 |
スクラップ対応の鉄鋼プロセス技術
D. G. Senk(Aachen Univ. of Technology, ドイツ)
|
|