「自動車材料技術の将来展望−エネルギー・環境・安全問題の克服に向けて」ワークショップ報告

超鉄鋼研究センター 冶金グループ 花村年裕

「自動車材料技術の将来展望−エネルギー・環境・安全問題の克服に向けて」ワークショップを2003年1月23日(木)物質・材料研究機構 千現地区本館第一会議室で開催しました。

本WSは、低環境負荷型材料の設計、創製、加工部品化、リサイクルなどに関する基礎研究に取り組んでいる超鉄鋼研究センターとエコマテリアル研究センターでの共同企画によるもので、自動車を主たる対象として、将来の材料技術のあり方について種々の観点から話題提供を頂き、NIMSが挑戦すべき研究課題とその戦略などについて議論することを目的としました。

悪天候にもかかわらず、大変盛況なワークショップとなりました。

参加者は106名、内訳は国研関係55名(内NIMS53名)、大学関係11名、鉄鋼関係9名、非鉄関係3名、自動車関係4名、重工関係8名、電気関係6名、化学関係6名、その他4名でした。参加者数と共に、広い分野からの聴講者は私たちの期待を遥かに超えるものでした。

特別講演では、「鉄鋼業における地球環境長期研究課題」を大阪大学 丸川静浄先生から、基調講演では、「21世紀の工業製品材料の概念」を名古屋大学 武田邦彦先生から頂き、自動車にとどまらず幅広い視点から材料技術の将来展望について活発な議論がなされました。

この中で、中国のSの高い石炭を鉄鋼プロセスの高炉で処理し、Sを低め、電力プラントに使用することでSの環境負荷を低減するという、アジアの環境技術に対して大変重要な構想が示されました。

また、現在の日本の循環型社会構想に対し、CO2対策、ダイオキシン対策について一般にマスコミで議論されている考え方の再考を促す斬新な観点や、生物と比較した場合の将来の理想とすべき自動車材料の観点も提示されました。

一般講演としては「自動車材料技術の将来展望−LCAの視点から」(河西純一氏:いすゞ自動車)、「自動車部品用アルミ合金の技術動向と特徴」(稲葉隆氏:神戸製鋼所アルミ銅カンパニー)、「衝突安全性能と自動車用材料」(東雄一氏:本田技術研究所栃木研究所)、そして「自動車燃費向上のための材料技術」(岡田義夫氏:日産自動車)を頂きました。

これらの講演において、将来の自動車材料に要求される開発の方向として、現在、自動車業界で進行しつつあるマルチマテリアルの考え方と、リサイクル技術が目指すユニアロイ化の考え方という相反する課題を今後、どういった形で捉えるべきかという点が呈示されました。

また、自動車材料の安全性を目指す技術開発が自動車の重量増加を促進する方向であるのに対し、環境負荷低減を目指す技術開発が自動車の軽量化を促進する方向であるという、相対する課題にどう対処して行くべきかなど、今後のNIMSのプロジェクト推進に役立つ有益な視点が多数示され、活発な議論がなされました。