超微細フェライト-パーライト鋼の高速変形挙動

超鉄鋼研究センター 冶金グループ 土田紀之

本研究では,不純物を含んだ超微細鋼を自動車鋼板として使用することを目標とし,自動車用鋼に必要な高速変形挙動について明らかにすることを目的とする.

変形挙動については,材料の機械的特性を表す応力-ひずみ曲線に注目し,低速から高ひずみ速度域までを視野に入れ検討を行っている.

昨年度までに同じ化学組成のJIS-SM490相当鋼を用いてフェライト粒径(D)の異なる3種類のフェライト-パーライト(FP)鋼(D=3.6, 9.8, 46.2 μm)を作製し,常温以下における静的引張試験を行った.
これらにより,FP鋼の引張変形応力におよぼす温度,ひずみ速度,フェライト粒径の影響に関し整理を行った(E-mail news 2001年12月号).今年度は同じくフェライト粒径の異なる3種類のFP鋼を用いて,常温以下,ひずみ速度1000 /sにおける高速引張試験を行った.

これらの結果より以下のことが明らかになった.

1.平均フェライト粒径3.6 μmのFP鋼は,高速変形においても他のFP鋼と比べて優れた
引張特性を示した.この時,均一伸びは粒径によらず約20 %と,微細化によりほとんど
 変化しなかった.

2.変形応力は高速変形においてもフェライト粒径の微細化により増大した.
 結晶粒微細化による変形応力の変化はホール・ペッチの式で記述することができた.

今後は,フェライト粒径2 μm以下の超微細フェライト-セメンタイト鋼に関する同様の実験を行い,特性変化について検討するとともに,これらの実験結果を整理し,熱活性化過程に基づいたモデリングでの解析を試みる.

なお本報告に関する実験結果等は,以下に整理されている.
http://www.nims.go.jp/millennium/member/b-home%20page/Main%20page.html
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参考文: N.Tsuchida, Y.Tomota, and K.Nagai. ISIJ International, vol.42 (2002), No.12 pp.1594-1596.