低炭素鋼におけるフェライト単相ラメラ組織の創製

超鉄鋼研究センター 冶金グループ 殷 福星

ラメラ組織は生体組織、高分子材料、鉱物などによくみられる組織であり、その物質或いは材料に特異な性質を与える。金属材料分野においても、TiAl金属間化合物をはじめ、Ti基合金、Ni基合金、Zn基合金などではラメラ組織の組織制御が材料の性質を改善するための主なアプローチとされている。

また、超強力鋼線はパテンティングと称する熱処理によって微細なパーライト組織を得て、高い引張強さと疲れ特性を示す。このパーライト組織はフェライト相とセメンタイト(Fe3C)相の層が交互に重なったラメラ組織である。

これまで、金属材料に利用されているラメラ組織は、組成と結晶構造が異なる別々の二つ相から構成され、各相の異なる特性を利用して、材料に優れた性質を与えるものである。

ミレニアムプロジェクトにおいては、多方向圧延方法を用いて、フェライト単一相の方位分布を制御し、初めて異なる方位どうしのラメラフェライト組織の創製に成功した。

低炭素鋼の場合、フェライト相の再結晶温度において圧下率50%以上の非同時二方向圧延によって、このようなラメラフェライト組織を有する棒鋼が創製できる。ラメラ組織を構成する<110>と<100>結晶方向を持つ二種類のフェライト粒がそれぞれ圧延方向に平行する。ラメラ間隔は圧延温度に依存するが、10〜30ミクロンである。<110>フェライト粒は圧延面における結晶方位が{111}であり、<100>フェライト粒は圧延面に{001}結晶面が平行する。

このようなラメラフェライト組織を有する鉄鋼材料は特異な力学と磁気異方性を示している。これまで創製が困難とされている鉄の単結晶の代わりに鉄基材料の異方性に関する研究及び高性能構造、電磁材料の開発を大いに促進することが期待できる。