0.1mass%低炭素鋼-100mm厚さ連鋳スラブ材の微細フェライト組織の形成

超鉄鋼研究センター 冶金グループ 山下晃生

ミレニアムプロジェクトでは,「スクラップ原料を出発材とする高品質鋼板プロセスの開発」を目標として掲げている。研究テーマの1つとして,省エネルギー,低コスト化プロセスとして期待される HDR (Hor Direct Rolling-直送圧延のこと)プロセスの組織微細化の研究が挙げられる。

組織微細化に関しては,これまでにも多くの研究例があり,例えば,STX-21プロジェクトにおいては,Si-Mn鋼を対象とした鳥塚らの一連の研究により,加工によって変形したオーステナイト粒の厚さが最終的なフェライト組織の微細化程度(フェライト粒の個々のサイズ)を決定していることが明らかとなり,微細なフェライト組織を得るための定量的な知見が与えられた。

ところが,HDRプロセスのように連続鋳造からの直送圧延を指向したプロセスの開発を進める上では,加工・熱処理に供する対象組織として「鋳造組織」に着目しなければならない。

鋳造組織とは,文字どおり鋳造時に形成される組織を意味し,デンドライトの1次アームや2次アーム間に偏析比の大きなMn(マンガン)やP(リン)が偏析するため,従来の加工・熱処理に供する均質化組織とは大きな相異がある。

これまで本研究では,0.1C-0.16Si-0.6Mn-0.01P-0.003S(mass%)組成の連鋳スラブ材を使用して,強加工プロセスによる微細フェライト組織の形成について調査してきた。

その結果,Mn(マンガン)偏析が存在する場合においても,強加工によって微細なフェライト組織が得られること,さらには歪3.5の強加工により5μm以下の微細フェライト粒が得られること,を明らかにした。

今後は,Mn(マンガン)やP(リン)の偏析分布がフェライト組織に与える影響について,さらなる定量的な評価を試みる。

本研究の最新の成果は,11月に大阪大学で開催される秋季鉄鋼協会講演大会にて発表予定である。