低炭素鋼のシャルピー衝撃特性に対するクロスロール圧延によるND面に平行な{100}面の配列崩れ効果

超鉄鋼研究センター 冶金Gr. 花村年裕

低炭素鋼のα+γ二相域圧延では、{100}集合組織が形成されてシャルピー衝撃試験でセパレーション破壊が助長され、上部棚エネルギーの減少が起こることが知られている[1]。
もし、{100}集合組織を崩すことができれば、衝撃特性を大きく変えることが期待される。

クロスロール圧延は、圧延方向に対して垂直な板幅方向のせん断を導入できる可能性がある。また、我々はクロスロール圧延で、従来の圧延によるせん断と異なる集合組織を形成するせん段を導入することを検討してきた[2]。

それゆえ、この研究では{100}集合組織を崩す目的で低炭素鋼にクロスロール圧延を応用し、その機械的性質に対する影響を検討した。

0.15wt.%C-1.5wt.%Mn-0.3wt.%Si-Feの組成の低炭素鋼を1023Kで50mm厚から10mm厚に4パスのリバース圧延で、クロス角0,5,10度を用いて圧延した。その結果、0度の圧延では{100}集合組織の顕著な形成が認められたが、クロス角が5度、10度となると{100}集合組織の崩れが認められ、これに伴い、衝撃特性の吸収エネルギーが250J以上の領域が248Kから198Kへと低温に移行することが認められた。また、セパレーションの頻度も顕著に抑制された。

文 献

  1. S.Matsuda, Y.Kawashima, S.Sekiguchi, and M.Okamoto: Tetsu to Hagane Vol.68, (1982),435.

  2. T.Hanamura, T.Higuchi, T.Yamashita, O.Umezawa, T.Inoue, S.Torizuka and K,Nagai: CAMP-ISIJ Vol.13(2000)1254. 

添 付