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研究活動ナノセオリー分野

分野コーディネーター: 佐々木 泰造

ナノスペース領域の現象を理解し、新しい現象の予測、 新しいナノ構造材料の創出を目指す

ナノ空間では、とても小さい原子が動き回り、さらに小さい空間を電子が飛び回る常識の通用しない世界です。また、こういった原子や電子が、おびただしい数で協調して、1つ1つの原子や電子が示す性質とは全く違う性質を示したりします。そこで起きる現象やそれを源とする現象を正しく理解し、新しい物質を構築するためには、日常常識にとらわれない考え方と方法、すなわち量子力学と統計力学が必要です。ナノセオリー分野では、ナノ空間で起こる様々な現象を解き明かすために、量子力学や統計力学を使って奇妙・奇抜な振る舞いの背景にある基礎理論を創出し、スーパーコンピュータを用いた定量的数値予測、またそのための計算方法の開発などを行なっています。その成果は、他のナノ分野での観測結果の解釈や予測などに生かされ、さらに新しい現象の予測や奇妙な性質を使った、新しい物質・材料の提案を目指しています。



» メンバー: ナノセオリー分野


大規模第一原理計算と実験によるナノ構造物質・高性能材料の開発

MANAナノセオリー分野では、現実のナノスケールデバイスやナノ構造物質における膨大な数の原子位置、さらにその結果得られる電子状態を理論計算によって明らかにするために、大規模第一原理計算プログラムCONQUESTを開発しています。通常の理論手法では、数千原子の系に対する第一原理計算も困難であるのに対して、CONQUESTはオーダーN法という最新の理論手法を用いることにより百万原子系についても信頼性の高い第一原理計算にもとづく構造最適化や分子動力学シミュレーションが可能になっています。

私たちはMANAの実験グループ(半導体ナノ構造物質グループ、深田直樹GL)と共同で次世代縦型トランジスタの材料として有望なSi/Geコアシェルナノワイヤに対する研究を行っています。コアシェルナノワイヤの特性はワイヤのサイズ、SiとGeの界面、不純物分布などにより大きく変わると予想されますが、大規模第一原理計算によって原子レベルの構造、電子物性を予測することができます。図は、p型Siを用いた場合に予測されるキャリアの1つの分布です。一方、実験グループはコア部分、シェル部分のサイズ、そして不純物位置の制御を行うことが可能になっています。私たちはこの理論・実験の共同研究によって、次世代デバイスのための高性能材料の開発を目指しています。

Si/Geコアシェルナノワイヤ中Geコア層に分布した計算による電子状態


モット転移近傍の 電子状態の解明とその応用

電子相関の強い領域では通常の金属の自由電子的描像では理解し難い性質が現れます。例えば、電子は、電荷とスピンという二つの自由度をもつ粒子ですが、モット絶縁体という物質では、電荷励起にはギャップがある一方で、スピン励起にはギャップがないことが多いため、このような電荷とスピンの分離した励起状態を粒子的な電子描像で説明することは困難です。そこで、モット絶縁体近傍のような強相関領域における電子状態の特徴を、従来の描像にとらわれない観点から明らかにし、その特異な電子状態を応用した新しい電子デバイスの実現可能性について理論的な検討を進めています。

モット絶縁体に微小ドープしたときの電子励起


協力的相互作用のモデル化による状態制御法の開発

メモリー素子開発においては、物質の双安定性を利用することで光、磁場、圧力などの様々な刺激によるスイッチングを実現する試みがなされています。原子や分子の電子・スピン状態の変化がマクロな状態変化へ導かれる仕組みを解明するため、協力的相互作用のモデル化により様々な多体効果の機構を研究しています。 例として2次元スピンクロスオーバー系(上図)における新しいタイプの相転移現象の発見や局所磁気モーメントの量子コヒーレンス制御法(下図)の開発などがあります。

(左)基底状態(6重縮退)と(右)6 state-clock mode


外場による局所モーメントの制御


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