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アウトリーチ齋藤軍治PO INTERVIEW

齋藤軍治PO INTERVIEW  WPIプログラムオフィサー




− MANAの活動を総体的に評価されるといかがでしょうか?

 非常に素晴らしいです。全体として見た場合は、そのように言って差し支えありません。3つのグランドチャレンジ※という目標を掲げて、大変な進歩を遂げました。

− MANAはWPI拠点の中で唯一大学以外の拠点です。国の研究所であるがゆえのMANAの特色をどのようにとらえていらっしゃいますか?

 WPI拠点を持つ大学は、法人全体のファカルティの人数が4500から7500位であるのに対し、MANAのホスト機関であるNIMSの定年制研究者は400人程度しかいません。年間の予算もNIMSは他の大学の1/5から1/9程度です。ですから、WPI年間予算の十数億円がNIMSにとっては大変な重みで、MANAの人たちは本当に真面目になってこれに対応しなくてはなりませんでした。
 また大学には母体が大き過ぎて各部局の力が強過ぎるところがあります。しかしNIMSは規模が小さいので、反対意見を持つ人を説得するのにもさほどは時間がかからず、組織運営の能力が強かった。ただ、国立研究所の科学者は、短期間に優れた道筋を立てて求められる結果を出すことには長けているのですが、大胆で「クレージーな」研究に取り組むことには慣れていません。真にイノベーティブな発想に基づく研究を活性化することが課題でした。

− WPI拠点としてのミッション:1)世界最高レベルの研究水準、2)融合研究領域の創出、3)国際的な研究環境の実現、4)研究組織の改革については、MANAはいかがでしたか?

 MANAの採択時に「優秀な人は多いのですが、それを凌駕するようなスーパーマンを育ててください」とお話ししたのです。そうしましたら、MANAは最初に外国人のものすごく優秀な研究者を集めました。次に、外国人の優れた若手研究者たちも。その結果、彼らの様子を見ながら日本人研究者たちが頑張って、今では、日本人研究者が、非常によい成果を出すまでに成長しました。こうして、MANAは国際的なナノテクノロジー研究のハブとして機能するようになったのです。
 また、MANAの組織づくりの能力は大変優れていて、管理運営も、拠点長・COO・事務部門長から成る「トロイカシステム」のおかげで、色々な仕事を処理することができました。このことは、外国人に親切な研究環境づくりを含め、MANAの目的達成に有効に働きましたし、母体であるNIMSの組織改革にも大いにつながったと思います。
 ノーベル賞級の先生方をアドバイザーに選んだのもよかったですね。それに太刀打ちしようとMANAを評価する評価委員会の側のレベルも上げまして、拠点の向上に向けて非常に活発な議論を交わすうちにMANAの評価も上がってきました。
 融合研究領域の創出については色々なパターンがありますが、MANAでは青野さんの提唱する「ナノアーキテクトニクス」というコンセプトが根底にあり、そこから生まれる新たなパラダイムの中で、異分野融合が進んだと思います。2016年度にナノセオリー分野が新設されて理論家が加わりましたので、実験家と理論家(理論家に先導、船頭、扇動の働きを期待します)とが大いに喧嘩しながらいっそう切磋琢磨してほしいです。

− MANAは若手人材の育成にも力を入れました。

 WPI各拠点の中でも、MANAの人材育成のよさは最高レベルです。WPI採択時に理事長だった岸先生はMANA発足前から若手国際人材育成に力を入れていました。MANAではさらに青野さんや板東さんらが、「上から目線」ではなくて、ボトムアップ型の研究プロジェクトを推進しました。前理事長の潮田先生を含めトップの人たちの柔らかな考え方、対応の仕方がとてもよかったと思います。目覚ましい成長を遂げた若手研究者が何人もいて、本当に感心しています。

− MANAは2017年4月から拠点長が青野から佐々木に交代します。佐々木新拠点長に何を期待されますか?

 「ナノアーキテクトニクス」という言葉は本当に素晴らしいと思っているのですが、原子・分子を操作する装置の開発や、ライフサイエンス領域での独創的研究の追求など、このコンセプトを物質科学の視点で深めるには、まだまだやることが山積みです。新しいコンセプトは、新たな分野を創造するはずで、これからが面白いところでしょう。ですから佐々木さんには新しい分野を積極的に開拓し、「ナノアーキテクトニクス」をもっと発展させて行ってほしいです。



齋藤軍治

1972年北海道大学理学研究科化学専攻修了、岡崎国立共同研究機構、東京大学、仏レンヌ第一大学客員教授、京都大学低温物質科学研究センターセンター長、などを経て、2012年より名城大学農学部教授。仁科記念賞、紫綬褒章など受賞歴多数。

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