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二次電池の高容量・長寿命化を両立する酸化物/グラフェン複合材料を開発

~分子レベルで交互に重ねたミルフィーユ構造が鍵~

NIMSは、酸化マンガンナノシートとグラフェンを分子レベルで交互に重ねた材料を合成し、リチウムおよびナトリウムイオン二次電池の負極材料として使うことで、従来の2倍以上高い充放電容量と、長いサイクル寿命を両立させることに成功しました。

NIMSは、酸化マンガンナノシートとグラフェンを分子レベルで交互に重ねた材料を合成し、リチウムおよびナトリウムイオン二次電池の負極材料として使うことで、従来の2倍以上高い充放電容量と、長いサイクル寿命を両立させることに成功しました。高容量だが壊れやすい酸化マンガンをグラフェンで挟んだことで、酸化マンガンの形態が保持され、長寿命との両立が実現しました。二次電池の高容量化と長寿命化を両立する負極材料として今後の応用が期待されます。

二次電池の高容量化が求められる中、現在負極に使われている炭素材料に代わる材料として、高い理論容量を持つ遷移金属酸化物に注目が集まっています。特に、層状構造の酸化マンガンは、分子1層までバラバラに剥離したナノシートにして負極に使うことができれば、表面すべてが活性部位となるため、大幅に容量を向上できると考えられます。しかし、酸化マンガンは充放電を繰り返すと構造が壊れやすく、しかもナノシートは団子状に凝集しやすいという課題を抱えていました。

本研究では、溶液中に分散させた酸化マンガンナノシートとグラフェンを混ぜ合わせ、1層ずつ交互に積層させたミルフィーユ構造の複合材料を合成しました (下図参照) 。酸化マンガンとグラフェンは、ともに負に帯電しており、通常は反発しあいますが、研究グループが2015年に開発した技術を使い、グラフェンを化学的に修飾して正に帯電させることで、溶液を混ぜるだけで交互に積層させることに成功しました。この材料をリチウムイオン二次電池の負極として用いたところ、負極容量が従来の2倍以上 (0.1A/gの電流密度で1325mAh/g) となり、5000サイクル充放電を繰り返しても、1サイクル当たりの容量減少はわずか0.004%でした。これは、これまでに報告されている金属酸化物系負極材料の中で最も高い容量と長いサイクル寿命です。グラフェンで挟むことで、充放電によって壊れやすい酸化マンガンの構造が保持されるとともに、電極材料全体の伝導性を改善した結果と考えられます。

今回、2種類の物質を分子レベルで複合化することで、単独の材料では実現が困難な高度な特性を導き出しました。本材料は、二次電池以外にも、スーパーキャパシタや電極触媒など多くのエネルギー貯蔵および変換システムに大幅な性能向上をもたらすことが期待されます。

本研究は、国立研究開発法人物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の馬仁志准主任研究者、佐々木高義拠点長らの研究グループによって行われました。この研究の一部は、文部科学省科学研究費補助金基盤研究 (A) 「2次元無機ナノシートのヘテロ累積による新奇機能開拓」の支援を受けて得られたものです。

本研究成果は、米国化学会ACS Nano誌のオンライン版にて現地時間2018年1月22日に掲載されました。(DOI: 10.1021/acsnano.7b08522)


プレスリリースの図1 : 酸化マンガンナノシート (赤・青) とグラフェン (緑) の複合材料構造の模式図




本件に関するお問い合わせ

(研究内容に関すること)

国立研究開発法人物質・材料研究機構
ナノアーキテクトニクス材料研究センター(MANA)

ソフト化学グループ
MANA准主任研究者

馬 仁志 (マ ルンジ)

Tel:029-860-4124

E-Mail:MA.Renzhi=nims.go.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)

国立研究開発法人物質・材料研究機構
ナノアーキテクトニクス材料研究センター(MANA)

拠点長
MANA主任研究者
ソフト化学グループ
グループリーダー

佐々木 高義 (ささき たかよし)

Tel:029-860-4313

E-Mail:SASAKI.Takayoshi=nims.go.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)

(報道・広報に関すること)

国立研究開発法人 物質・材料研究機構
経営企画部門 広報室

〒305-0047 茨城県つくば市千現 1-2-1

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Fax: 029-859-2017

E-Mail: pressrelease@ml.nims.go.jp
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