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隠れた物性情報を引き出す新しい電子顕微鏡技術の開発

~二次電子を電子源として使う発想の転換と、天文学の手法を応用することで実現~

2017.05.26
(2017.05.19 更新)

NIMSの研究グループらは、電子ビームを使った顕微鏡において、電子のエネルギーがゼロに近い領域から高エネルギーまでの広いエネルギー範囲でナノ薄膜を一度に計測する新発想の汎用の分光顕微鏡技術を開発し、その有効性を実証しました。

ダ・ボ (物質・材料研究機構 先端材料解析研究拠点および統合型材料開発・情報基盤部門 情報統合型物質・材料研究拠点 研究員) と吉川英樹 (同機構 表面化学分析グループ グループリーダー) は、田沼繁夫 (同機構 特別研究員) 、塚越一仁 (同機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 主任研究者) 、渡辺一之 (東京理科大学 教授) 、丁澤軍 (中国科学技術大学 教授) らを主とする研究グループとの共同研究により、電子ビームを使った顕微鏡において、電子のエネルギーがゼロに近い領域から高エネルギーまでの広いエネルギー範囲でナノ薄膜を一度に計測する新発想の汎用の分光顕微鏡技術を開発し、その有効性を実証しました。

単色入射電子ビームのエネルギーを変化させ電子光学系を再調整しながら電子顕微鏡像を計測する手間のかかる従来の方法ではなく、基板物質内で生成した広いエネルギー分布を持つ二次電子を仮想の白色電子源としてナノ薄膜を観察する発想を転換した新手法を開発しました。その実現にあたって、二次電子に含まれるバックグラウンド信号を完全に除去する必要があり、そのために天文学で望遠鏡の微弱信号の精密検知に利用されていた4点計測法を発展させてナノ薄膜に適用しました。それによりグラフェンの電子透過率をゼロに近い領域から600電子ボルトまでの広い範囲で一度に計測し、その実測値が理論値と良く一致することを確認しました。二次電子の信号に隠れていたナノ薄膜の電子透過率と言う物性情報を引き出すことは、今回初めて報告されました。広いエネルギー範囲の可視光を使った物体の透過率特性は物体の”色”を意味していますので、広いエネルギー範囲で電子の透過率を求めることは、電子と言う微小な”目”を使ってナノ薄膜の局所的な”色”を見ていることに相当します。通常は存在の検知すら難しいナノ薄膜を短時間に特定部位を狙って”色”などの品質を識別する技術の開発は、大面積で品質の均一性を確保するのが難しい新規のナノ薄膜の研究にとって重要です。

本研究は、科学技術振興機構 (JST) のイノベーションハブ構築支援事業の「情報統合型物質・材料開発イニシアティブ (MI2I)」、東京大学物性研ならびに自然科学研究機構共通研究施設 での計算機施設利用の一環、および、文部科学省科学研究費補助金新学術領域研究「原子層科学」 (No.JP25107004) 、科研費(No. JP25400409)、National Natural Science Foundation of China (Nos. 11274288 and 11574289)の補助をうけて行われました。

本研究成果は、現地時間2017年5月26日10時 (日本時間5月26日18時) にNature Communications誌にてオンライン掲載されます。


プレスリリースの図(b) : 分光顕微鏡における4点計測法の原理の説明図。単色の入射電子ビームが4つの異なるパターン (金基板の2つの結晶方位の領域の上にナノ材料が存在する場合としない場合の計4パターン) の試料領域に照射され,各領域から放出された白色の二次電子の強度を演算することで,白色の電子ビームがナノ材料を透過する物理環境が仮想的に実現できることを示している。




本件に関するお問い合わせ

(研究内容に関すること)

国立研究開発法人 物質・材料研究機構
先端材料解析研究拠点 表面化学分析グループ
グループリーダー

吉川英樹 (よしかわひでき)

Tel:029-859-2451

E-Mail:YOSHIKAWA.Hideki=nims.go.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)

東京理科大学
理学部第一部 物理学科
教授

渡辺一之

E-Mail:kazuyuki=rs.kagu.tus.ac.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)

〒162-8601 東京都新宿区神楽坂1-3
東京理科大学 神楽坂校舎 1号館8階

(報道・広報に関すること)

国立研究開発法人 物質・材料研究機構
経営企画部門 広報室

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([ = ] を [ @ ] にしてください)

東京理科大学
広報部 広報課

Tel:03-5228-8107

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小原正之 / 三宅雅晴


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