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ナノ粒子を利用した太陽熱による高効率な水の加熱に成功

~セラミックスのプラズモン共鳴を用いた太陽熱利用の促進に期待~

NIMS MANAの研究チームは、遷移金属窒化物や炭化物のナノ粒子が、太陽光吸収効率が高いことを数値計算で明らかにし、実際に窒化物のナノ粒子を水に分散させた実験で水温上昇速度などが速いことを確認しました。

国立研究開発法人 物質・材料研究機構 (以下NIMS) 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 (MANA) ナノシステム光学グループの石井智MANA研究者、長尾忠昭グループリーダーらの研究チームは、遷移金属窒化物や炭化物のナノ粒子が、太陽光吸収効率が高いことを数値計算で明らかにし、実際に窒化物のナノ粒子を水に分散させた実験で水温上昇速度などが速いことを確認しました。今後これらのナノ粒子は、太陽光を利用した水の加熱・蒸留などへの応用が期待されます。

太陽光は最も有望な再生可能エネルギーの一つで、その利用方法として太陽電池などを用いた発電のほかに、太陽光を吸収して熱に変える光熱変換による給湯などが挙げられます。家庭の用途別消費エネルギーにおいて給湯と暖房の割合は合計で55%に達するため、太陽光を無駄なく熱に変えて利用できれば、電気を使わずに給湯や暖房ができるため二酸化炭素の削減にも繋がります。太陽光を吸収するために従来のように集熱パネルや集熱パイプを用いると伝熱ロスが発生するため、水などの媒質に分散させることで直接加熱できるナノ粒子に注目が集まっています。

今回研究チームは、NIMS環境・エネルギー材料部門 環境再生材料ユニット 触媒機能材料グループの梅澤 直人主任研究員らと共同で第一原理計算を行い、太陽光の光熱変換に適したナノ粒子材料の探索及び物性値の予測を行いました。その結果、セラミックスである遷移金属窒化物と遷移金属炭化物の太陽光吸収効率が高いことを明らかにしました。さらに、遷移金属窒化物の中でも窒化チタンに注目し、窒化チタンナノ粒子を水に分散させて太陽光を照射したところ、9割に近い高効率で光を熱に変換することを実験的に確認しました。窒化チタンのナノ粒子は広帯域なプラズモン共鳴を示すため、ナノ粒子1個当たりの太陽光吸収効率では金や炭素のナノ粒子よりも高い性能を示すと考えられます。今後、この成果を床暖房や給湯および汚水や海水の蒸留などに応用することを検討しています。これら以外のナノ粒子の応用として、高分子とナノ粒子とのハイブリット材料の開発や、ナノ粒子を介した化学反応の促進などにも取り組んでいます。

本研究は、科学技術振興機構 (JST) 戦略的創造研究推進事業 チーム型研究 (CREST) 「エネルギー高効率利用のための相界面科学」研究領域 (花村克悟総括) における研究課題「セラミックスヘテロ層における界面電磁場制御と熱エネルギー利用」 (研究代表者 : 長尾 忠昭) の一環として行われました。

本研究成果のうち数値計算と実験に関する部分は、The Journal of Physical Chemistry C誌にて2016年1月25日に掲載されます。

(a) ナノ粒子を用いた太陽熱温水装置の模式図。(b) ソーラーシミュレーターからの集光光をTiNナノ粒子が分散した水に照射している様子。水温が上がる前から水蒸気発生が目視できる。




本件に関するお問い合わせ

国立研究開発法人物質・材料研究機構
ナノアーキテクトニクス材料研究センター(MANA)

ナノシステム光学グループ MANA研究者

石井智 (いしいさとし)

Tel:029-860-4944

E-Mail:sishii=nims.go.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)

国立研究開発法人物質・材料研究機構
ナノアーキテクトニクス材料研究センター(MANA)

ナノシステム分野 ナノシステム構築ユニット ナノシステム光学グループ グループリーダー

長尾忠昭 (ながおただあき)

Tel:029-860-4746

E-Mail: NAGAO.Tadaaki=nims.go.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)


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