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人工分子モーターの回転方向制御を超分子で実現

~柔軟に動作するナノマシン大量生産への道を拓く~

NIMS MANAのグループと、国立大学法人京都大学化学研究所の研究チームは、金属基板の上で超分子を用いた分子モーターを作製し、超分子を構成する分子同士の結合を組み替えることで、モーターを逆回転させるという柔軟な動作を実現しました。

内橋隆MANA研究者、ジョナサン・ヒルMANA研究者、中山知信ユニット長、クリスチャン・ヨアヒムMANA主任研究者(フランスCEMES/CNRSグループリーダー兼任)らのグループと、国立大学法人京都大学化学研究所の小野輝男教授らからなる研究チームは、金属基板の上で超分子を用いた分子モーターを作製し、超分子を構成する分子同士の結合を組み替えることで、モーターを逆回転させるという柔軟な動作を実現しました。

分子モーターは生物の生命活動を維持するために欠かせないナノマシンの一種であり、ナノマシンによって構成された機械的システムを、生物の体内と同じように自己組織化の手法を用いて作製することは、ナノテクノロジーが掲げる夢の一つです。これまで、基板表面上で有機分子を使った分子モーターが作られてきましたが、モーターの回転方向を切り替えることができないという大きな問題がありました。これはモーターを構成する分子同士が強い力によって結合されているため、構造上、柔軟性に乏しいことが原因でした。

今回、研究チームは、超分子を用いることで柔軟な構造をもつ分子モーターを作製し、モーターの回転方向を切り替えることに初めて成功しました。超分子は、構成単位となる複数の分子が、共有結合より弱い水素結合などの力によって結びついてできた複雑な構造をもつ分子です。超分子で作製された分子モーターは、分子内に注入された電流によって一方向に回転します。さらに、ある条件下で電流を流すことで、モーターの部位を組み替え、これにより回転方向を反転させることに成功しました。組み替えができたのは、超分子内の分子同士が、強過ぎずまた弱過ぎもしない適切な大きさの力によって結びつけられているためです。また、この分子モーターの作製には自己組織化の手法を利用しており、一度に大量に作製することも可能です。

今後はこの成果を利用して、より大規模で高機能のナノマシンの構築を目指します。また、人工分子モーターの動作を調べることで、生体内の天然の分子モーターが動く詳細なメカニズムの解明につながることも期待されます。

本研究は科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究「アインシュタイン・ドハース効果を用いた有機分子モーターの創製」(代表者:内橋隆)の一環として行われました。

本研究成果は、米国化学会発行のNano Letters誌に平成27年6月22日に掲載されました。

*実際に分子モーターが逆回転する様子の動画は、下記のアドレスでご覧いただけます。
http://pubs.acs.org/doi/suppl/10.1021/acs.nanolett.5b01908

プレスリリースの図2: 分子モーターが動作する様子を示す概念図。走査トンネル顕微鏡の探針から電流を注入することで、ポルフィリン分子の二量体が矢印の方向に回転する。



本件に関するお問い合わせ

国立研究開発法人物質・材料研究機構
ナノアーキテクトニクス材料研究センター(MANA)

MANA研究者

内橋 隆

Tel:029-860-4150

Fax:029-860-4793

E-Mail:UCHIHASHI.Takashi=nims.go.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)

国立研究開発法人物質・材料研究機構
ナノアーキテクトニクス材料研究センター(MANA)

超分子グループ 主任研究者

有賀 克彦

Tel:029-860-4597

E-Mail:ARIGA.Katsuhiko=nims.go.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)


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