わたしたちは日常生活で光触媒、太陽電池、LED、レーザーなどの形をとった光学機能材料に囲まれて暮らしています。これらの材料の働きは電子正孔対の光励起とそのエネルギー緩和、輸送、輻射をともなう再結合などの微視的な過程に基づいています。これら競合する微視的過程の時間スケール(通常フェムト秒とマイクロ秒の間)が、しばしば光学機能の効率を左右します。


わたしたちはポンプ&プローブ技術を用いて光学機能材料の超高速光学応答を研究しています。フェムト秒パルス光によって物質中に誘起されるコヒーレントフォノンを観測することにより、原子の動きを実時間で知るだけでなく、他の手法では知ることのできない電子格子相互作用の時間変化を露わにすることができます。

最近の研究課題

10フェムト秒をきる超短パルス光を用いると、グラファイトの面内C-C伸縮振動Gモード)のように高振動数のコヒーレント光学フォノンを励起することができます。コヒーレント面内フォノンの振動数は、光励起強度とともに高波数シフトを示します。時間分解解析により、振動数は光励起直後に瞬間的に高波数にシフトし、その後ピコ秒の時間スケールで定常値に戻ることがわかります。

わたしたちは理論家グループとの共同研究により、この光誘起高波数シフトがグラファイト電子構造の擬二次元性を反映した「非断熱効果」であることを明らかにしました。これは原子核の動きにフェルミ準位近傍の電子が追随できず、遮蔽効果(コーン異常)が過渡的に弱まることで説明されます。

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  1. 箇条書き項目低次元系の電子格子相互作用

  1. 箇条書き項目 色素増感太陽電池の界面における電荷注入および再結合ダイナミクス

次世代のローコスト太陽電池として期待されている色素増感太陽電池の発電効率は、色素から酸化チタンへの電荷注入、色素の電解質による還元、酸化物伝導帯電子と色素カチオンの再結合過程といった、フェムト秒〜ミリ秒で起こる微視的過程の競合により決定されます。わたしたちは色素増感太陽電池のさらなる効率向上に向けて、酸化物界面における微視的過程の速度を明らかにし、新たな色素や溶液添加物の開発に光物性の観点からフィードバックを与えることを目指しています。

  1. 箇条書き項目 ワイドギャップ半導体のコヒーレントフォノン

窒化ガリウム、酸化亜鉛、ダイアモンドなどのワイドギャップ半導体は、現在および次世代の紫外LEDや紫外レーザー材料として注目を集めています。わたしたちはこれらの物質のコヒーレントフォノンを時間分解観測することにより電子格子相互作用を研究しています。ダイアモンド単結晶ではコヒーレントフォノンの寿命は7ピコ秒以上と、24フェムト秒のフォノン周期に較べると格段に長いことを見いだしました。(本頁右上図)

  1. 箇条書き項目 コヒーレントフォノンの検出メカニズム:許容および禁制ラマン散乱

結晶中に励起されたコヒーレントフォノンは、結晶の光学特性を周期的に変調するため、反射率や透過率での検出が可能になります。わたしたちは、微小な原子変位が誘電関数を変化させる過程に、さまざまなラマン散乱過程が関与していることを明らかにしました。プローブ波長が結晶の吸収と共鳴である場合は、「許容」なラマン散乱過程に加えて「禁制」なラマン過程が関与することが可能となります。プローブ光の偏光角を回転させると、禁制と許容のラマン過程は等方的なコヒーレントフォノン振幅と非等方的な振幅の干渉として観測されます。

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