超高速分光研究室
コヒーレントであろうとなかろうと、フォノンは長く生き延びることができません。多くの場合、その寿命はピコ秒程度です。
欠陥のない完全結晶が有限の温度に置かれた場合、フォノンはおもに基準振動間の非調和結合によって消滅していきます。最も単純な例は、一つの高振動数フォノンが自発的に崩壊して、より低振動数のフォノン二つを生成する過程です。寿命の温度依存性測定することにより、どのような非調和過程がフォノン崩壊を支配しているのかを知ることができます[7]。
不純物原子、異なる質量の同位体原子、空孔などの結晶欠陥による散乱によっても、コヒーレントフォノンは効率的に消滅します[8]。
強い光励起下で電子温度が極端に高い場合には、電子格子相互作用がコヒーレントフォノンの寿命を決定することがあります。この場合には、コヒーレントフォノンのフーリエ変換スペクトルはファノ干渉的な線形を示します[9]。
グラファイトのような低次元系では、高振動数フォノンはフェルミ準位近傍に電子正孔対を生成することによって崩壊します。この場合には、比較的弱い光励起がコヒーレントフォノン崩壊を抑制することがあります[10]。
[7] Hase et al. Phys. Rev. B 58, 5448 (1998).
[8] Ishioka et al. Physica B, 316-317, 296 (2002); Appl. Phys. Lett. 78, 3965 (2001).
[9] Misochko et al., J. Phys.: Cond. Mater. 19, 156227 (2007).
[10] Ishioka et al., Phys. Rev. B 77, 121402R (2008).
ビスマスのコヒーレントフォノンの温度依存性(上)と励起光密度依存性(下)。
固体材料にフェムト秒パルス光を照射すると足並み(位相)の揃った原子の集団振動コヒーレントフォノンを誘起することができます。ここではコヒーレントフォノンがどのように生成し、やがて寿命が尽きていくかを紹介します。