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特集
新規20プロジェクトの紹介と最近の成果
― 量子ビームセンター ―

イオンビームによる
ナノ物質・材料開発
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量子ビームセンタ−
イオンビームグループ
岸本 直樹 雨倉 宏
大吉 啓司 武田 良彦 河野 健一郎

 イオンビーム技術は、半導体工業において主要な役割を果たしており、半導体材料に光・電子特性を付与するため、所定の深さに不純物原子を導入する道具として発展してきました。一方、デバイス作製技術の発展は微細加工技術に依るところが大きく、リソグラフィーなど、いわゆるトップダウン法によりナノレベルに向けて微細化に邁進し、イオンビーム技術と微細加工技術の両輪によって現代のエレクトロニクスが開花してきました。しかしながら、現在のエレクトロニクス・デバイスでは性能が頭打ちになり、微細加工も早晩限界に至ることが技術的に予測されており、新たなナノ物質・材料創製・制御技術が望まれています。とりわけ、次世代へのイノベーションとして、3次元ナノ精密制御技術は、最も重要な開発ターゲットとされています。
 当グループでは、イオンビームの持つ特色、すなわち(1)材料中の所定の深さに、多様な原子を注入する高空間制御性、(2)大電流イオンによる材料の組成制御性、あるいは(3)電子励起等による原子移動や反応促進効果などを利用して研究開発を行っています。負イオン注入法は、任意の元素を透明絶縁体中に導入することができることから、共鳴エネルギーを現在の光通信に重要な赤外域から次世代用の可視域まで自由に変化させ得ます。特に、重イオンとレーザーの動的な相乗効果を利用した複合照射・ナノ粒子制御技術(表紙図上)や、その場計測技術等により、サブピコ秒応答までの超高速光通信用ナノ粒子材料の創製(図1)、広範な光波長域の動作エネルギー・チューニング(図2)等を達成し、3次元ナノ構造制御への糸口となる独自技術を蓄積してきました。
 今後は、超高精度かつ高効率で3次元制御されたナノ構造を、基板材料中に直接作り込む究極の技術として、イオンビーム投影ナノパターンニング技術(ナノ・ステンシルを通過したイオンビームパターンを電磁レンズでさらに縮小して直接イオン投影する技術)を開発することを目指しており、これらのアプローチにより、ナノ物質・材料の創製・計測のための先端的なイオンビーム基盤技術の開発を進めていきます。

図1
図2
図1   大電流Cuイオン注入された石英ガラスの断面透過電子顕微鏡像. 特定のイオン電流密度では直径10nmの球形の金属Cu粒子が自己形成し、イオンの飛程RPよりやや浅い位置に2次元的に配置します(黒い横線は表面マーカーのCr膜).
図2   大電流負イオン注入技術によって生成した種々の金属ナノ粒子分散材料の光学吸収スペクトル.ナノ粒子の種類によって変化する吸収ピークは表面プラズモン共鳴によるものであり、ピコ秒以下の超高速の非線形光学特性を示します.


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