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特集
新規20プロジェクトの紹介と最近の成果
― ナノ計測センター ―

強磁場固体NMRの開発と
ナノ物質・材料研究への応用
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ナノ計測センター(強磁場共用ST併任)
強磁場NMRグループ
清水 禎
丹所 正孝
後藤 敦 端 健二郎

 本プロジェクトの目的は、NIMSが開発済みの世界屈指の磁石群(920/930MHz磁石、40T級ハイブリッド磁石等)とNIMSの分光計開発技術を結集させて世界最高性能のNMRシステムを開発し、ナノ物質・材料研究における重要課題を克服するために応用することです。
 NMR(核磁気共鳴法)の利点は、例え非晶質物質や混合物であっても、その材料の機能発現部位をナノレベルで選択的に計測し、3次元化学構造とその動的性質をピンポイントで解明できることです。従来の代表的応用例は、薬品開発などにおいて分子構造を特定することです。新薬登録時にはNMRデータの添付が法律で義務付けられています。
 本来のNMRは周期律表の約90%の元素(表の白色以外の元素)に対して観測可能です。しかし、従来は感度と分解能の点で特別に有利な水素と炭素だけに利用が限定されていました。他の元素でも高感度と高分解能を実現させるためには、20T以上の強磁場が必須です。特に、表の赤色で示した元素は四極子核(核スピン量子数 I  が1よりも大きい)なので、強磁場は分解能を向上させるための唯一の手段です。表に示したように、四極子核をもつ元素には実用上重要な元素が多種類含まれています。従来は観測困難だった元素も強磁場によって観測可能になる様子を図の等高線によって示します。この図では磁場の絶対値には必ずしも意味がないため、基準になる磁場 H 0(大きさは任意)との相対値によって強磁場の効果を示します。
 30T以上の定常磁場を発生できる今日唯一の技術であるハイブリッド磁石を用いたNMR開発も、米国、EU、中国、日本で行われています。既にNMR仕様の磁石開発を終え、NMRのデータ取得に至っているのは米国だけですが、EUはNMR仕様を目標にした磁石を現在建設中です。NIMSに既存の40T級ハイブリッド磁石は、米国に次ぐ世界第2位の強磁場を誇ります。現在これをNMR仕様も満たすようにバージョンアップさせる一連の開発を行っています。

表
表   周期律表.
図
図   四極子核の感度と分解能. 強磁場(等高線)ほど有利になる.


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