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研究最先端

ナノレベルの薄さの透明磁石
− ナノスケールの積木細工で次世代IT素子をつくる −
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ナノスケール物質センター
ソフト化学グループ
長田 実
佐々木 高義

 子供のブロック遊びのように、「ナノスケールのブロックを使って色々な構造体や機能を作りたい」、これはナノテクノロジー研究に携わる大人すべての夢です。私達は安価で手軽な溶液プロセスを使って、ビーカーの中で様々な機能のナノブロックを作ったり、並べたりすることで、夢へ向けたモノ作りを進めています。
 このモノ作りでまず重要となるのが、伝導性、磁性、誘電性といった様々な機能のブロックを集めることです。こうしたブロックとして注目しているのが、私達が独自に開発してきた酸化物ナノシート(図1(a))という、厚さ約1nm、横サイズ数百nmの2次元ナノ結晶です。この基本ブロック自体は透明半導体ですが、今回、コバルト、鉄といった磁性元素を置換した酸化チタンナノシートを新たに作製したところ、室温で強磁性体として機能するナノブロックとなることがわかりました。また、このブロックは、磁性(スピン)により光の偏波面を回転させたり、光で磁気情報を記録する機能(磁気光学効果)(図2(a))も併せ持っており、紫外線波長で大きな効果を示します。これで、紫外レーザーを使った大容量の光通信や高密度の光磁気記録に使える透明磁石ナノブロックを実現できます。
 このブロックがさらにユニークなのが、溶液での自己組織化プロセスにより様々に積み重ねることで、積層数や隣接するブロックの種類を制御した多彩な材料デザインが可能な点です(図1(b))。実際、コバルト置換体と鉄置換体を使って、ナノスケールの積木細工で多層膜や人工超格子を作製したところ、磁気光学回転角(図2(a)の偏波面回転角)の増大や応答ピークのシフト(図2(b)の▼印)など自在な特性制御が実現し、色々な波長の光に応答する素子を作ることができました。今回の積木細工はほんの一例で、組み合わせ、可能性は無限大です。私達の作った材料が、光通信素子、光スイッチ、光磁気メモリーなど、次世代IT素子の基幹ユニットになることを夢見て、私達の挑戦は続きます。

図1
図2
図1  (a)酸化チタンナノシートの構造、(b)ナノスケールの積木細工のイメージ図(レゴブロック版).
図2  (a)磁気光学効果の動作原理、(b)ナノスケールの積木細工で実現した磁気光学特性の制御技術、 上はコバルト置換体の10層多層膜 (Ti0.8Co0.2O2)10 、 下はコバルト置換体と鉄置換体が交互積層した人工超格子(Ti0.8Co0.2O2/Ti0.6Fe0.4O2)5


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