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特集
新規20プロジェクトの紹介と最近の成果
― 生体材料センター ―

生体材料の医療応用に
向けた研究
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生体材料センター
医療応用技術グループ
内田 義之
丸山 典夫 陳 国平
山本 玲子 廣本 祥子 白井 暢子

 医療応用技術グループは、組織再生用基盤材料、生体用金属材料、および薬物送達システムを専門とする研究者を擁しています。各専門の枠を越えた情報交換をもとに、実際に医療現場に立っている医学研究者の視点から医用材料の開発にあたっています。
 私達は、多孔質構造を精密に制御した生体吸収性高分子を開発しました。この多孔質基盤材料を用いて体細胞や幹細胞を培養し、軟骨や骨、皮膚、靱帯、膵臓などの生体組織の再生を行っています(表紙写真下参照)。
 金属材料は、強度・靭性・剛性・導電性などに優れているため、人工関節、骨折固定材などに使用されています。近年、血管や食道などにできた狭窄部位を拡張するステント(金属メッシュチューブ)の使用が急増しています。血管用のステントでは血流によって金属材料の腐食や疲労が促進されること、および血管壁の細胞や血球に加わる剪断力が、細胞と材料との相互作用に影響を及ぼすことが予想されます(図1)。しかし、これらの影響を血流下で評価する技術はまだありません。そこで、私達は流れ環境下での材料の耐食性、疲労特性、および生体適合性の評価手法を開発しています。評価技術の確立により動物実験を低減させ、新材料開発を加速することができます。
 生体には様々な防御システムが存在します。薬を投与する場合も、これらのシステムの影響は免れません。その上でナノ吸入デバイスは経口投与と比べて非常に有効であり、また注射剤に代わる手法として開発が進行しつつあります。ナノサイズの薬を吸入することで、効率よく肺胞に到達し、肺胞に分布している毛細血管内から全身臓器に運搬されます。私達はナノ粒子を分散した状態のままナノ繊維上に保持する技術を確立し、世界に先駆けてナノ粒子吸入デバイスの開発に成功しました。付着しているナノ粒子は人の吸気速度で離脱することから、現在マスク状の吸入デバイスなどに適用することを検討しています(図2)。

図1
図2
図1  血流下では物質拡散の促進により腐食が加速され、このために脈動に伴う繰り返し荷重による金属疲労が促進されます。また、血流による剪断力は細胞と材料との相互作用に影響を及ぼします.
図2  マスク状吸入デバイス.


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