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特集

電子線励起超軟X線分光分析装置の開発
− 高感度でリチウムのX線を検出可能に −
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ナノ計測センター
先端表面化学分析グループ
木村 隆
荻原 俊弥 福島 整 田沼 繁夫

 試料に電子線を照射すると物質固有のX線が発生します。このX線のエネルギーや強度から物質の同定(定性分析)や、成分元素の濃度測定(定量分析)が出来ます。また、X線のピーク形状の変化から、元素の化学結合状態を知ることも可能です。
 リチウムは最近よく利用されるようになり、燃料電池やリチウムイオン電池に使用されています。これらの電池のエネルギー変換効率を向上させることは、地球温暖化防止の観点からも重要となります。しかしながら、従来のX線分光器ではリチウムの分光は不可能でした。
 今回開発した装置では、回折格子で分光した超軟X線をCCDカメラで撮影してスペクトルを測定する方法を採用しました。この方法は、分光器に可動部が無いためコンパクトで且つ高分解能と高精度が実現できました。図1と2に装置の概観と模式図を示します。
 また、この様な分光器では初めての試みであるX線の全反射現象を利用したレンズ(ポリキャピラリー)を採用し、超軟X線の検出効率を約1,000倍以上向上させることが出来ました。さらに、試料を超高真空の中に入れているので、オージェ電子などの他のスペクトルの分光も可能になります。この装置は、先端材料研究のみならず表面物性や表面分析の研究にも応用が可能です。図3に、この分光器で測定した、リチウムK-L2,3 線と金属アルミニウムおよび金属マグネシウムのL2,3-M 線のスペクトルを示します。
 どの様な試料にでも対応でき、迅速分析が可能なこの様な装置は、今のところ世界にこの一台しかありません。

図1
図2
図1  装置の概観.
図2  装置の模式図.
図3
図3  金属リチウムと金属マグネシウムおよび金属アルミニウムのスペクトルを比較しました.
フェルミエッジを示す、鋭いピークの立ち上がりが観察され、分解能の高いことが示されています.


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