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特集

量子情報通信用光源の実現にめど
− 究極の安全性を持つ量子暗号通信実用化への一歩 −
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光材料センター
光周波数変換グループ
日本大学 早稲田大学
栗村 直
北村 健二 井上 修一郎 中島 啓幾

 光ファイバ通信は広く普及し個人情報や金融・軍事などの機密情報もやりとりされるようになってきています。現在の暗号化技術は解読コンピュータの性能向上によって安全性が保証されなくなる危険性があり、究極の安全性を保証する量子暗号通信に注目が集まっています。量子暗号通信では安全な秘密鍵配布のために、光の粒を一つずつ送り出す単一光子源を用います。単一光子による通信では盗聴を直ちに検知できるため、盗聴が検知された場合には配布鍵を変更して安全性を保証できます(図1)。
 私達は、強誘電体単結晶を用いた分極反転構造による波長変換デバイスを研究してきました。強誘電体は電気的なプラス、マイナス(自発分極)をもつため、電界によってこれを反転させることができます。周期的に反転させることで波長変換デバイスとして高効率で動作し、ひとつの光子から元の波長と異なる光子対を発生させることができます。この様に故意に異なる特性を持たせた光子対を発生させて光子対を効率よく分離して、一方を秘密鍵配布に、他方をゲートのタイミング検出に利用することができます(図2)。今回私達は、量子情報通信に適した高効率光子対発生デバイスを光ファイバの通信波長帯で実現し、従来の光子対発生デバイスを10倍以上効率化することに成功しました。
 今回の成果は量子情報通信の基本光源技術における飛躍的な特性改善であり、量子コンピュータや量子テレポテーションといった新しい分野にも貢献するものと期待されています。 本研究は情報通信研究機構委託研究「量子制御光変復調技術の研究開発」プロジェクトの中で行われたものであり、関係各位に深く感謝致します。

図1
図1  究極の安全性をもつ単一光子源による量子情報通信.

図2
図2  光子対発生デバイスを用いた単一光子源.


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