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特集 新規20プロジェクトの紹介と最近の成果
― ナノシステム機能センター ―

新しい原子・分子エレクトロニクスの
創成を目指して
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ナノシステム機能センター
原子エレクトロニクスグループ
長谷川 剛
寺部 一弥 大川 祐司 鶴岡 徹

 私達は、新原理に基づく革新デバイスの創成を目指して、新機能を発現する材料の探索から研究を進めています。特に、イオン伝導体や有機分子など、従来のデバイス開発にはあまり用いられてこなかった材料に着目して、それらが示す原子や分子スケールの構造変化を利用した新しいタイプのデバイス開発を進めています。
  これまでに、電子・イオン混合伝導体(電子に加えて、金属イオンも結晶内を移動できる物質)を用いて、ナノスケールの金属突起の形成と消滅を制御して動作する「原子スイッチ」(図1)を開発してきました。原子スイッチは、寸法が小さいにも係わらずON状態の抵抗が極めて小さいという特徴があります。この特徴を利用して、一つのチップであらゆる機能を実現できる「次世代プログラマブル論理演算デバイス」の開発を、企業や大学と共同で進めています。
 一方、ナノワイヤーの交点にスイッチ機能を配置したクロスバー構造は、新しいコンピューター・アーキテクチャーの構築を可能にすると期待されています。私達は、上述の原子スイッチや、独自に開発した導電性有機分子ナノワイヤーを用いたクロスバー構造(表紙写真上)の開発も目指しています。
 また、従来概念を超えたデバイスの研究も進めています。ナノスケールの世界においては、トンネル効果によって消失し易い電子を制御するよりも、安定に存在する原子を制御した方が、高性能で、かつ信頼性も高いデバイスを作製できる可能性があります。私達は、単一原子の移動制御を目指して、金属イオンの1次元輸送に関する研究を進めています。図2(a)に、当グループの梁特別研究員らと作製した電子・イオン混合伝導体ナノワイヤーの電子顕微鏡写真を示します。このナノワイヤーは、銀と硫化銀部分から構成されており、その界面において、金属原子(イオン)の授受が行われます。ナノワイヤーに印加する電圧を精密制御することで、1原子(イオン)毎の授受を制御できるものと期待しています。図2(b)は、界面における原子(イオン)の授受によるナノワイヤーの電気特性の変化を示す測定結果です。正電圧側でONとなり、負電圧側でOFFとなっています。これらの成果をもとに、単一原子デバイスの研究を加速して行きたいと考えています。

図1
図1  原子スイッチによるクロスバー構造.
図2
図2  (a):混合伝導体ナノワイヤーの電子顕微鏡写真.
(b):電気特性測定結果.


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