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近年ますます脅威となるウィルス感染、化学物質過敏症などの環境モニタリング、緊張が高まるバイオテロ対策など、刻々と変化する環境の中で、国民が安全に安心して生活を営める社会を構築するために (生)化学物質に対するモニタリング・センシングへの要求は加速度的に高まっています。その実現のために、私達は、細胞の表層に糖脂質や糖タンパク質として存在する「糖」に着目しました。「糖」は、ウィルスをはじめとする多様なゲスト分子が外界から生体へ侵入する際の窓口的役割を担っています。したがって、ゲスト分子に対する糖の特異的な認識機構をよく理解し、その認識能を定量化することで、細胞内外で起こる生体分子間相互作用のモニタリング・センシングの実現が期待できます。ところが、市販の糖アレイを利用した場合、基材上に糖分子が無秩序にデポジットされているため、糖の認識能を定量的に取り扱うことは難しいのが現状です。 今回、糖をシリコン基板上へ単分子固定化することに成功しました。これにより、糖の配列に秩序性をもたらすことが可能となります。固定化には、糖で終端されたアルケンと水素終端化シリコン間の熱的ラジカル反応を利用しました(図1)。シリコン表面が徐々に糖で終端されることから基板表面における水滴接触角が徐々に減少します。私達が使用したシリコン基板上の糖サンプルを光電子分光分析法により調べたところ、糖単分子と基板界面で形成されるC-Si界面単結合が検出されたことにより、図1で示したようなメカニズムで糖単分子が固定化できたことが確かめられました。 このサンプルとヒママメレクチンとを作用させると、サンプル表面全体にレクチン集合体が見られ、糖の認識能は固定化後も機能していることが明らかとなりました。さらに、図2(a)に示すフォトマスクを利用して、糖単分子のマイクロパターンを作製し、同様にレクチンを作用させたところ、レクチン集合体は糖単分子領域にのみパターン状に観察されました(図2b)。今後、シリコンの特性を利用した高性能生体分子認識デバイスの開発を目指します。 |
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