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特集 一層の発展が期待される萌芽研究

カーボンナノケージおよびメソポーラス窒化炭素
− 色素やタンパク質吸着剤としての応用 −
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燃料電池材料センター
ナノイオニクス材料グループ
Ajayan Vinu

 多孔性のシリカや炭素は、ガス選別、ガス吸着、触媒、エネルギー貯蔵、キャパシターなどの電子部品開発において、近年急速に注目を集めつつあります。これらの多くが、ミクロ孔(ポーラス)を持った物質であり、より多くの物質への適用を考えると、もうワンランク大きいメソ孔を持つ物質の開発が重要です。私達は、無機物の鋳型を用いて、新しいタイプのメソポーラス物質を開発し、タンパク質などの比較的大きな物質吸着固定化や燃料電池材料としての応用を試みています。本稿では、メソポーラス窒化炭素とカーボンナノケージの開発を紹介します。
  私達は、メソポーラスシリカを鋳型としてメソポーラス窒化炭素(MCN)を合成することに世界で初めて成功しました。これは、構造制御されたメソポーラスシリカの中でエチレンジアミンと四塩化炭素を反応させ、最後に鋳型であるシリカを除くことによって得られます。この物質は、きれいに蜂の巣状に配列した窒化炭素のナノロッドがつながることで構成され、規則的な孔構造を持ちます(表紙写真下)。孔のサイズは極めて均一であり、比表面積、比孔容積とも非常に大きな値を示すことがわかりました。本物質は触媒担体、ガス貯蔵、潤滑、ドラッグデリバリーへの応用が考えられると期待しています。この他にも、炭素源や窒素源を工夫することによっていろいろな性質を持つものが開発できるでしょう。
  私達は、最近、全く新しいメソポーラスカーボン、その名も「カーボンナノケージ(CNC)」を開発しました。これは、ケージ型(かご状)のメソポーラスシリカKIT-5を鋳型として、その中で炭化プロセスを行うことによって合成されます(図1)。形成されるメソ孔の孔径等の構造は、炭素源であるショ糖と鋳型のシリカの比を変えるだけで、簡単に制御することができます。さらに、この物質の比表面積や比孔容積が、これまでに報告されているメソポーラスカーボン素材(CMK-3)をはるかに凌駕する値になることを見出しています。この物質は、タンパク質(リゾチーム)吸着において従来物質(CMK-3)を大幅に上回る吸着能を示すばかりか、液を流すだけで色素溶液を完全にろ別できます(図2、活性炭(AC)やCMK-3ではほとんどろ別できないことに注目)。この物質を用いた、機能分子の選択分別や燃料電池素材への応用を現在検討しています。

図1
図2
図1  カーボンナノケージの作製法.
図2  カーボンナノケージによる色素除去.


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