NIMS NOW


特集

白色LED用の緑色蛍光体を開発
− 色再現性のよい照明実現へ −
ナノセラミックスセンター
窒化物粒子グループ
広崎 尚登
解 栄軍

 白色LED(発光ダイオード)は消費電力が少なく、長寿命、無水銀という環境に優しい特徴があり、今後の照明器具は、蛍光灯から白色LEDに移行すると期待されています。現行の白色LEDは青色LEDと黄色蛍光体を組み合わせた構成であるため緑色と赤色成分が少なく、色の再現性に問題がありました。そこで、私達は緑色の蛍光体の研究に取り組み、このたびβサイアロン系の蛍光体の開発に成功しました。
 βサイアロンは窒化ケイ素の固溶体であり耐熱材料として研究されてきた物質です。これに、光学活性なEuイオンを固溶させることにより、図1に示す発光特性を持つ緑色蛍光体を開発しました。この蛍光体は、300〜450nmの波長の光で励起することが可能であり、近紫外LEDや青色LEDを光源とする白色LED用の緑色蛍光体として適しています。
 私達は、既にサイアロン系の赤色蛍光体、黄色蛍光体を開発しており、緑色蛍光体ができたことにより、青色励起で緑、黄、赤色を発色させることができます(図2)。そこで、(株)フジクラの協力を得て3種類の蛍光体の混合比と塗布量を変えることにより、様々な色の白色LEDを試作することに成功しました(図3)。平均演色評価数(色の再現性を示す値で、100が基準値で蛍光灯は80)は82〜88であり既存の白色LEDや蛍光灯を凌ぐ、自然な色の照明光源が得られました。電力消費効率は電球の倍以上の値であり、エネルギー効率も優れており、商品化が期待されています。

β-sialon
α-sialon
CaAISiN3
図2  サイアロン蛍光体.
図1  開発蛍光体の発光特性.

昼光色
昼白色
白色
温白色
電球色
図3  開発した3種類の蛍光体を用いた白色LED.


line
トップページへ