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特集

引き延ばすと色が変化するゴムシート
- コロイド粒子を利用した色が可逆的に変化するエラストマー材料 -
光材料センター
光波動制御グループ
不動寺 浩
澤田 勉

 宝石のオパールは粒子径の揃ったシリカ粒子が最密充填した粒子集積体で、光波長サイズの規則配列構造を形成しています。シリカ粒子は無色透明にも関わらず構造色が発色します。これは白色光の一部が選択的に反射されるからです。この発色原理を利用した人工オパールは人工宝石として既に工業化されています。最近、人工オパールの構造色を応用した高次機能材料あるいはセンシングデバイスへの研究が展開されています。
 私達は、これまで溶媒の種類によって構造色が変化する溶媒センシングを報告しています(2003.Vol.3 No.12)。今回、弾性変形によって構造色が可逆的に変化する新材料を開発しました。この新材料は図Aに示すような規則配列したポリスチレン粒子とその隙間をシリコンエラストマーで充填した構造です。入射した白色光はブラッグ回折により特定波長の可視光のみが選択反射されます。ここで、例えば初期状態(図B)から水平方向に引き延ばした状態(図C)に変形すると縦方向の粒子配列面の間隔は圧縮されます。このように配列周期が変化するとブラッグ回折する波長が移動し、構造色が変色します。実際にはこの新材料はゴムシート表面にコーティングして発色層として使用します。
 表紙写真上に示すようにゴムシートを垂直方向に引っ張るとその前後で構造色はオリジナルの赤色(A)から緑色(B)へと変色します。この構造色は弾性変形の範囲であれば可逆的に再現性よく変化します。変形量(%)とブラッグ回折波長(λ)は表紙図上の(C)、(D)のような関係が見られます。この現象を利用した引っ張り強度を目視で判断できる簡易型の応力センサー(特開2006-28202)などへの応用を検討しています。


図  構造色が変形によって変化する原理の説明.


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